アルコール性肝硬変で障害年金は受給できる?断酒180日・検査数値・Child-Pugh分類を詳しく解説

アルコール性肝硬変と診断され、黄疸や強い倦怠感、腹水などの症状が続いている方は、障害年金を受給できる可能性があります。
ただし、アルコール性肝硬変による障害年金には、ほかの原因による肝硬変とは異なる、「180日以上の断酒」という特別な認定条件があります。
また、障害年金用の診断書には過去6か月間の検査成績を記載する必要があるため、断酒を始めてからどの時期に検査を受け、いつ診断書を作成してもらうかも重要です。
今回は、アルコール性肝硬変による障害年金の認定基準について、必要な検査項目やChild-Pugh(チャイルド・ピュー)分類、診断書を取得する際の注意点を詳しく解説します。

1.アルコール性肝硬変も障害年金の対象になります

肝硬変は、肝臓に長期間炎症や障害が生じ、肝細胞が線維化して肝臓の機能が低下する病気です。
アルコール性肝硬変の場合、肝機能の低下によって次のような症状が現れることがあります。
・強い疲労感や全身倦怠感
・黄疸(皮膚や白目が黄色くなる)
・食欲不振、吐き気、体重減少
・腹水による腹部の膨満感
・足のむくみ
・食道・胃静脈瘤による吐血や下血
・肝性脳症による意識障害や判断力の低下
こうした症状によって日常生活や仕事に大きな支障が生じている場合には、障害年金の対象となる可能性があります。
なお、障害年金は病名だけで支給が決まるわけではありません。
肝機能の検査成績、腹水や肝性脳症などの臨床所見、日常生活や労働への影響を総合的に判断します。

2.アルコール性肝硬変は「180日以上の断酒」が必要

障害年金の認定基準には、アルコール性肝硬変について次のように定められています。
「アルコール性肝硬変については、継続して必要な治療を行っていること及び検査日より前に180日以上アルコールを摂取していないことについて、確認のできた者に限り、認定を行うものとする。」
つまり、アルコール性肝硬変による障害年金では、次の2つが重要になります。
① 継続して必要な治療を受けていること
医療機関に継続的に通院し、医師の指示に従って必要な治療を受けていることが求められます。
② 検査日前180日以上、飲酒していないこと
単に「現在はお酒を飲んでいない」というだけではなく、検査日までに180日以上断酒していることを確認できる必要があります。
そのため、障害年金の請求では、断酒を始めた日だけでなく、検査を受けた日も重要になります。

3.障害年金の診断書には、過去6か月間の2回以上の検査成績が必要

肝疾患による障害年金の診断書には、次の記載上の注意があります。
「過去6カ月における2回以上の検査成績をそれぞれ記入してください。」
さらに、アルコール性肝硬変の場合には、検査日ごとに次の項目について「○」または「×」を記載することになっています。
・180日以上アルコールを摂取していない。
・継続して必要な治療を実施している。

断酒180日経過前の検査成績は使えないのでしょうか?

ここは、特に注意したい点です。
診断書の記載要領では、「断酒180日を経過した後の検査成績を2回以上記載しなければならない」とまでは明記されていません。
したがって、断酒180日経過前の検査成績であっても、診断書に記載すること自体は可能です。
しかし、アルコール性肝硬変の認定基準には、検査日前180日以上の断酒という条件があります。
そのため、断酒180日経過前の検査成績と、経過後の検査成績では、障害認定における取扱いが異なる点に注意が必要です。
例えば、次のようなケースを考えてみましょう。

検査日 断酒状況
10月15日 断酒140日
11月25日 断酒180日
12月15日 断酒200日

この場合、10月15日の検査成績も過去6か月間の検査結果として診断書に記載できます。
しかし、10月15日時点では断酒180日の条件を満たしていません。
一方、11月25日と12月15日の検査成績は、断酒180日以上を満たした状態での検査結果となります。
可能であれば、断酒180日経過後に2回以上の検査を受け、その結果を踏まえて診断書を作成してもらう方が、認定基準との関係を明確にしやすいと考えられます。
ただし、これは断酒後の検査を2回受けることが法律上の絶対条件という意味ではありません。
検査結果や診断書の作成時期、障害年金の請求時期などによって判断が異なりますので、個別に検討することが大切です。

4.障害年金の審査で重要となる6つの検査項目・臨床所見

肝硬変による障害年金では、主に次の6項目の異常の程度が重要になります。

検査項目・臨床所見 中等度の異常 高度異常
血清総ビリルビン(mg/dL) 2.0以上3.0以下 3.0超
血清アルブミン(g/dL・BCG法) 3.0以上3.5以下 3.0未満
血小板数(万/μL) 5以上10未満 5未満
プロトロンビン時間(PT・%) 40以上70以下 40未満
腹水 腹水あり 難治性腹水あり
肝性脳症 Ⅰ度 Ⅱ度以上

※国民年金・厚生年金保険障害認定基準「第13節 肝疾患による障害」に基づき作成。血清アルブミン値はBCG法による基準です。測定方法が異なる場合は注意が必要です。

血清総ビリルビン

肝臓の処理能力が低下すると数値が上昇し、黄疸の原因となります。

血清アルブミン

肝臓で作られるタンパク質です。肝臓の機能低下によって数値が下がることがあります。

血小板数

肝硬変に伴う門脈圧亢進や脾臓の腫大などによって、血小板数が減少することがあります。

プロトロンビン時間(PT)

血液が固まる働きを調べる検査です。肝臓で作られる血液凝固因子の産生能力を反映する指標の一つです。

腹水

肝硬変によってお腹に水がたまる状態です。特に、治療を行っても改善しにくい難治性腹水は、重い障害の判断材料となります。

肝性脳症

肝臓の機能低下によって、睡眠リズムの乱れ、判断力の低下、意識障害などが現れる状態です。

なお、AST(GOT)、ALT(GPT)、γ-GTPなども肝疾患の診断書に記載する検査項目ですが、上記6項目とは役割が異なります。
ASTやALTがそれほど高くない場合でも、肝臓の機能が大きく低下していることがあります。
そのため、ASTやALTの数値だけで障害年金の受給可能性を判断することはできません。

5.Child-Pugh(チャイルド・ピュー)分類とは?

肝硬変の患者さんが主治医から説明を受けることのある「Child-Pugh分類」も、障害年金の診断書に記載する項目です。
Child-Pugh分類とは、肝硬変の重症度を評価するための指標で、次の5項目をそれぞれ1~3点で評価します。
1.
肝性脳症の程度
2. 腹水の程度
3. 血清総ビリルビン値
4. 血清アルブミン値
5. プロトロンビン時間
これらの合計点によって、A・B・Cの3段階に分類します。

Child-Pugh分類 合計点 重症度
A 5~6点 比較的軽度
B 7~9点 中等度
C 10~15点 重度

Child-Pugh分類Cは、肝機能が大きく低下している状態を示します。
ただし、Child-Pugh分類Cだから障害年金1級、Bだから2級というように、分類と障害等級が直接対応するわけではありません。
障害年金では、先ほどの6項目の異常の数や程度、日常生活の制限なども考慮して等級が判断されます。

6.肝硬変による障害年金は何級になる?

障害認定基準では、各等級に相当する障害の状態が例示されています。

障害年金1級

高度異常が3項目以上、または高度異常が2項目と中等度異常が2項目以上あり、一般状態区分が「オ」に該当する状態。
一般状態区分「オ」とは、身の回りのこともできず、常に介助が必要で、終日ベッドで過ごし、活動範囲がほぼベッド周辺に限られる状態です。

障害年金2級

中等度または高度の異常が3項目以上あり、一般状態区分が「エ」または「ウ」に該当する状態。
例えば、身の回りのことはある程度できても、しばしば介助が必要で、日中の半分以上を寝て過ごしている状態などが該当します。

障害厚生年金3級

中等度または高度の異常が2項目以上あり、一般状態区分が「ウ」または「イ」に該当する状態。
例えば、軽度の症状があり、肉体労働は制限されるものの、軽い家事や座って行う仕事はできる状態などが該当します。

なお、これらは認定基準に示された例であり、検査数値の異常の数だけで自動的に等級が決まるわけではありません。
実際には、症状の経過や日常生活・労働能力などを含めて総合的に判断されます。
また、障害厚生年金は3級までありますが、障害基礎年金は1級・2級のみです。

7.初診日の確認も重要です

障害年金を請求するためには、原則として、障害の原因となった傷病について初めて医師の診療を受けた「初診日」を確認する必要があります。
肝硬変と診断された日が、必ずしも障害年金上の初診日になるとは限りません。
例えば、以前から健康診断で肝機能異常を指摘され、医療機関を受診していた場合や、アルコール性肝炎などで治療を受けていた場合には、過去の受診歴を確認する必要があります。特に、初診日に厚生年金へ加入していたかどうかは、障害厚生年金3級の対象になるかという点でも重要です。

8.診断書を依頼する前に確認しておきたいこと

アルコール性肝硬変で障害年金の請求を検討している場合には、主治医に次の事項を確認しておくとよいでしょう。
・
障害年金用の診断書を作成してもらえるか
・現在のChild-Pugh分類はA・B・Cのどれに該当するか
・断酒180日以上を確認できるか
・断酒180日経過後の血液検査をいつ受けられるか
・過去6か月間に必要な検査成績がそろっているか
また、障害年金の請求では、検査結果だけでなく、日常生活や仕事にどのような支障が生じているかを具体的に整理することも大切です。
例えば、強い倦怠感によって1日の大半を横になって過ごしている、食事や入浴に家族の援助が必要になっている、仕事を休職・退職せざるを得なくなった、といった事情があれば、その実態を確認します。
障害年金の診断書は、検査数値だけでなく、日常生活や労働能力の制限についても医師に正確に記載していただくことが重要です。

9.まとめ|アルコール性肝硬変の障害年金は、断酒期間と検査時期に注意

アルコール性肝硬変による障害年金では、肝機能の重症度だけでなく、断酒期間と検査を受けた時期が重要になります。
特に注意したいのは、次の点です。
・継続した治療と検査日前180日以上の断酒が必要
・診断書には過去6か月間の2回以上の検査成績を記載する
・断酒180日経過前の検査成績も記載できるが、認定基準との関係に注意する
・Child-Pugh分類と障害年金の等級は同じではない
・検査数値とともに日常生活や労働への影響も重要

断酒180日を経過したからといって、必ず障害年金を受給できるわけではありません。
一方、適切な時期に検査を受け、現在の障害の状態を診断書へ正確に反映してもらうことは、請求を検討するうえで大切なポイントです。
当事務所では、アルコール性肝硬変をはじめとする肝疾患についても、初診日の確認、検査成績や診断書の内容、日常生活の状況などを踏まえ、障害年金請求の可能性を検討しています。
障害年金の請求をお考えの方は、お気軽にお問い合わせください。

 

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