脳疾患の障害年金
脳疾患で障害年金の対象となる病名は、脳卒中・脳出血 ・脳梗塞・脳血管障害・くも膜下出血・脳内血腫・脳動脈瘤・脳挫傷のようなものがあります。
診断書で重要なのは、日常生活動作です。
肢体の障害が上肢及び下肢などの四肢にわたる障害(脳血管障害、脊髄損傷等の脊髄の器質障害、進行性筋ジストロフィー等)の場合には、「第1 上肢の障害」、「第2 下肢の障害」及び「第3 体幹・脊柱の機能の障害」に示したそれぞれの認定基準と認定要領によらず、「第4 肢体の機能の障害」として認定されます。また、肢体の機能の障害の程度は、関節可動域、筋力、巧緻性、速さ、耐久性を考慮し、日常生活における動作の状態から身体機能を総合的に認定されます。
各等級の例としては、以下のようになります。
| 障害の程度 | 障害の状態 |
|---|---|
| 1級 |
|
| 2級 |
|
| 3級 | 一上肢及び一下肢に機能障害を残すもの |
身体機能の障害の程度と日常生活における動作の障害との関係は、次のとおりです。
ア. 「用を全く廃したもの」とは、日常生活における動作のすべてが「一人で全くできない場合」×又はこれに近い状態をいう。
イ. 「機能に相当程度の障害を残すもの」とは、日常生活における動作の多くが「一人で全くできない場合」×又は日常生活における動作のほとんどが「一人でできるが非常に不自由な場合」△×をいう。
ウ. 「機能障害を残すもの」とは、日常生活における動作の一部が「一人で全くできない場合」×又はほとんどが「一人でできてもやや不自由な場合」〇△をいう。
脳血管疾患による肢体障害等で 初診日から6月経過後、医学的見地から、「それ以上の機能回復がほとんど望めないと医師が判断した日(=症状固定日)」を、障害認定日として取り扱うとされています。つまり、通常の障害年金のように1年半待たなくても障害年金の請求ができることがあります。ただし、リハビリを継続している場合は、目的が機能回復か現状維持の為なのかを慎重に判断する必要があります。診断書には、「傷病が治ったかどうか」欄で「治った日」に日付が記載され「確認」とされていること、「予後」欄は症状固定が確認できるような記載があること、機能回復のリハビリが終了している旨の記載があることがポイントです。
脳血管障害の初診日については、倒れて救急車で運ばれ救命処置を受けた、という方も多いかと思います。その場合、おおよそ数週間の入院の後、リハビリ専門の病院へ転院されることが多くなっています。この場合「初診の病院」は救命処置を受けた病院、診断書作成医療機関は「リハビリ専門の病院」になります。
なお、元は心疾患だったもの、心臓の血栓が脳へ飛び、脳疾患を発症した場合、初診日は心疾患として初めて病院を受診した日になりますので、注意が必要です。
高次脳機能障害の障害年金
高次脳機能障害に関しては、脳損傷に起因する認知障害全般、日常生活または社会生活に制約があるものが認定の対象となり、診断書は「精神の診断書」を使用します。(※失語がある場合は「言語の診断書」も使用することがあります。)高次脳機能障害について、精神の診断書に上手く落とし込む方法をご存知でない医師も多いので、やはり私ども障害年金社労士のサポートは必要ではないでしょうか。
主な症状は、次の通りです。(その他にも数多くの症状がございます。)
①記憶障害:今話した内容をすぐに忘れてしまう
少し前に食べた食事内容を忘れる
2~3日前の出来事を忘れる
②注意障害:一つのことから他のことへ切替えできない
二つのことを同時にできない
洗面・歯磨きが済んだ後に水を止め忘れる
③遂行機能障害:目的に合わせて効率よくできない
自分で一日の生活を計画的に過ごせない
④半側空間無視:左側にある人や物を無視してぶつかる
⑤失認:よく知っている人の顔がわからない
日にちと時間がわからない
迷子になる
⑥社会的行動障害:感情のコントロール低下
欲求のコントロール低下
固執性
意欲低下、抑うつ
⑦失語:言われていることが理解できない
なかなか言葉を思い出せない
言い間違えが多い
文字や文章が理解できない
病前に書けた字が書けない
病前にできた簡単な計算ができない
上記症状を、精神の診断書表面「⑩障害の状態 イ.左記の状態について、その程度・症状・処方薬等を具体的に記載してください。」、診断書裏面「⑩障害の状態 ウ.日常生活状況 の 2日常生活能力の判定」の書き方について、医師にどのように依頼するかが社労士の腕の見せ所です。
また、脳出血→高次脳機能障害が残った 場合、肢体の障害2級+精神の障害2級=併合1級の可能性もでてきます。
失語症の障害年金
失語症は、「聞いて理解する」「読んで理解する」「書く」にわたって支障がある言葉が出ない症状で、左脳の言語領域に障害があると言葉が上手く使えなくなります。診断書は「言語」の診断書を使用します。
ただし、基本的には、精神の診断書だけで2級以上を十分に評価できるのであれば、必ずしも言語の診断書と併せて2枚の診断書を提出する必要はないと私は考えています。
高次脳機能障害の障害年金では、
・記憶障害
・注意障害
・遂行機能障害
・失認
・社会的行動障害
などによる日常生活能力の低下を、通常は精神の障害用診断書で評価します。
一方、失語症については、言語の診断書で評価することも可能です。評価は、日常的に使用する単語や文章が話せるか又は理解できるかを確認します。単語、2~3文節の短文、4~6文節の長文を言ってもらい、その内容を理解しているかを確認します。
ただし、年金機構は最終的に総合認定を行いますので、
・精神の診断書だけで2級相当が明らか
・失語症の程度を追加しても等級が上がらない
・失語症の状況が精神の診断書や病歴就労状況等申立書で十分把握できる
というケースでは、精神の診断書のみで請求することは実務上よくあります。
むしろ、
・精神の診断書だけでは2級に届くか微妙
・失語症が重く、コミュニケーション能力が障害の中心である
場合には、言語の診断書も提出した方が有利になるでしょう。
言語の障害認定基準には1級が無く、2級・3級・障害手当金しか等級がありません。
併合とは?
重要なのは、「音声又は言語機能の障害(特に失語症)と肢体の障害又は精神の障害とは併存することが多いが、この場合については併合認定の取扱いを行う」とされていることです。
言い方を変えれば、肢体・精神・言語の診断書との組み合せによっては、併合認定されても上位等級にならないので、診断書を2枚、3枚作成してもらったところで無駄になってしまいます。
言語と併合で上位等級になる組合せ
- 肢体(2級4号)+言語(2級2号) ⇒ 併合1級
- 精神(2級4号)+言語(2級2号) ⇒ 併合1級
- 肢体(3級7号)+精神(3級7号)+言語(3級6号) ⇒ 併合2級
- 精神(3級7号)+言語(3級6号) ⇒ 併合2級
言語と併合しても上位等級にならない組合せ
- 肢体(3級7号)+言語(2級2号) ⇒ 併合2級 ⇒ 言語1枚でOK
- 肢体(2級4号)+言語(3級6号) ⇒ 併合2級 ⇒ 肢体1枚でOK
- 精神(3級7号)+言語(2級2号) ⇒ 併合2級 ⇒ 言語1枚でOK
- 精神(2級4号)+言語(3級6号) ⇒ 併合2級 ⇒ 精神1枚でOK
- 肢体(3級7号)+精神(3級7号)+言語(2級2号) ⇒ 併合2級 ⇒ 言語1枚でOK
- 精神(3級7号)+肢体(3級7号)+言語(障害手当金9号) ⇒ 併合3級
⇒精神または肢体1枚でOK
診断書の枚数が多いと実費も時間も費やすことになりますので、どの診断書を組み合わせるのかも社労士の腕の見せ所だと思います。

