難病/肢体の障害年金
上肢の障害
◆1級
・両上肢の機能に著しい障害を有するもの(以下「両上肢の用を全く廃したもの」という。)
・両上肢のすべての指を欠くもの(以下「両上肢のすべての指を基部から欠き、有効長が0のもの」という。)
・両上肢のすべての指の機能に著しい障害を有するもの
(以下「両上肢のすべての指の用を全く廃したもの」という。)
◆2級
・両上肢のおや指及びひとさし指又は中指を欠くもの
(以下「両上肢のおや指及びひとさし指又は中指を基部から欠き、有効長が0のもの」という。)
・両上肢のおや指及びひとさし指又は中指の機能に著しい障害を有するもの
(以下「両上肢のおや指及びひとさし指又は中指の用を全く廃したもの」という。)
・一上肢の機能に著しい障害を有するもの(以下「一上肢の用を全く廃したもの」という。)
・一上肢のすべての指を欠くもの(以下「一上肢のすべての指を基部から欠き、有効長が0のもの」という。)
・一上肢のすべての指の機能に著しい障害を有するもの
(以下「一上肢のすべての指の用を全く廃したもの」という。)
・身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であって、
日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの
◆3級
・一上肢の3大関節のうち、2関節の用を廃したもの
・長管状骨に偽関節を残し、運動機能に著しい障害を残すもの
・一上肢のおや指及びひとさし指を失ったもの又はおや指若しくはひとさし指を併せ一上肢の3指以上を失ったもの
(以下「一上肢の親指及びひとさし指を近位指節間関節(親指にあっては指節間関節)以上で欠くもの又は親指若しくはひとさし指を併せ、一上肢の3指を近位指節間関節(親指にあっては指節間関節)以上で欠くもの」という。)
・おや指及びひとさし指を併せ一上肢の4指の用を廃したもの
・身体の機能に、労働が著しい制限を受けるか、又は労働に著しい制限を加えることを必要とする程度の障害を残すもの
上肢の障害による障害年金
上肢の障害とは、肩・肘・手首などの関節が動かしにくい場合、腕や手に十分な力が入らない場合、指を自由に使うことができない場合、腕や指を切断している場合、骨折後に骨の変形や偽関節が残っている場合などをいいます。
障害年金では、単に「腕が何度まで動くか」という関節可動域だけで判断されるわけではありません。
関節の動く範囲、筋力、手や指の巧緻性、動作の速さ、耐久性、そして実際の日常生活や仕事にどの程度支障が生じているかを総合的にみて認定されます。
日本年金機構の認定基準でも、関節の評価にあたっては、可動域だけではなく、筋力・巧緻性・速さ・耐久性を考慮するとされています。
上肢の「3大関節」とは
障害年金でいう上肢の3大関節とは、**肩関節、肘関節、手関節(手首)**です。
関節の動きについては、肩では屈曲・外転、肘では屈曲・伸展、手首では背屈・掌屈が主な運動として評価されます。
また、前腕については回内・回外、手指については屈曲・伸展が評価されます。
両腕がほとんど使えない場合
両上肢の機能に著しい障害があり、「両上肢の用を全く廃したもの」と認められる場合は、障害年金1級の対象となります。
認定基準では、両腕それぞれについて3大関節のうち2関節以上が、
- 不良な位置で固まっている
- 他動可動域が参考可動域の2分の1以下に制限され、さらに筋力も半減している
- 筋力が著しく低下、または消失している
といった状態が目安とされています。
ただし、両腕に障害がある場合には、片腕だけに障害がある場合よりも食事、着替え、洗面、排せつなどの日常生活への影響が大きくなるため、実際の生活動作も考慮して総合的に認定されます。
片腕がほとんど使えない場合
一上肢の機能に著しい障害があり、「一上肢の用を全く廃したもの」と認められる場合は、障害年金2級の対象となる可能性があります。
具体的には、一方の腕について3大関節のうち2関節以上が、
- 不良な位置で強直している
- 他動可動域が健側の2分の1以下で、さらに筋力が半減している
- 筋力が著しく低下または消失している
といった状態が基準になります。
両腕に相当程度の障害が残っている場合
両腕とも完全に使えない状態まで至っていなくても、両上肢に相当程度の機能障害が残り、日常生活が著しく制限されている場合には2級に該当する可能性があります。
認定基準では、その例として、両上肢それぞれの3大関節のうち1関節について、他動可動域が参考可動域の2分の1以下に制限され、かつ筋力が半減している状態が示されています。
ここでも、数値だけではなく、両手を使う食事や着替えなどが実際にどの程度できるかが重要になります。
「関節の用を廃したもの」とは
障害認定基準上の「関節の用を廃したもの」とは、原則として、その関節の他動可動域が健側の2分の1以下に制限されている状態をいいます。
また、可動域の数字だけでなく、例えば起床してから就寝するまで常に固定装具を必要とするほどの動揺関節なども、同程度の障害として扱われます。
「関節に著しい機能障害を残すもの」とは
関節の他動可動域が健側の3分の2以下に制限されている場合や、常時ではないものの固定装具が必要となるほどの動揺関節、習慣性脱臼などは、「関節に著しい機能障害を残すもの」として評価されます。
さらに、3分の2以下まで制限されていなくても、他動可動域が健側の5分の4以下に制限されている場合などは、他の障害との併合認定の対象になることがあります。
指が動かない場合も障害年金の対象になります
手や指の障害については、指そのものが残っていても、実質的に使うことができない場合には「指の用を全く廃したもの」と評価されることがあります。
例えば、
指の著しい変形、高度の麻痺による脱力、関節が不良な位置で固まっている状態、傷あとによって指が埋没している状態、不良な位置で拘縮している状態
などにより、「指は存在しているものの、ないのとほとんど同じ程度に機能しない」場合がこれに当たります。
親指・人差し指・中指の障害は特に重要です
手の機能では、物をつまむ動作に親指が大きな役割を果たします。
例えば、両手の親指がほとんど使えず、さらに両手の人差し指または中指もほとんど使えないため、指と指の間に物を挟むことはできても、親指と他の指を向かい合わせて物をつまむことができない状態は、重い障害として評価されます。
「指の用を廃したもの」の具体的な基準
認定基準では、例えば次のような場合を「指の用を廃したもの」としています。
指の末節骨の長さの2分の1以上を失っている場合、またはMP関節やPIP関節(親指ではIP関節)に著しい運動障害があり、他動可動域が健側の2分の1以下に制限されている場合です。
仕事に著しい制限がある場合
厚生年金に加入していた方の場合、1級・2級ほどではなくても、上肢の障害によって仕事が著しく制限される場合には、障害厚生年金3級に該当する可能性があります。
認定基準では、例えば、
一上肢の3大関節のうち1関節が不良な位置で強直している場合や、両上肢それぞれの3大関節のうち1関節の筋力が半減している場合
などが、一上肢に相当程度の障害を残すもの、または両上肢に機能障害を残すものの例として示されています。
両腕に障害がある場合は、やはり日常生活動作への影響も考慮して総合的に認定されます。
人工関節・人工骨頭を入れている場合
肩、肘、手首などの上肢の3大関節について人工骨頭または人工関節に置換している場合にも、障害厚生年金の対象になることがあります。
原則として、一上肢の3大関節のうち1関節以上に人工骨頭または人工関節を挿入・置換している場合、または両上肢それぞれについて1関節以上を置換している場合は3級として認定されます。
ただし、人工関節に置換した後もさらに重い機能障害が残り、「一上肢の用を全く廃したもの」などに相当するときは、2級など上位の等級に認定されることがあります。
また、一定の場合には、人工関節等を挿入・置換した日が障害の程度を認定する時期となります。
一定程度の機能障害が残る場合
1級~3級には達しなくても、一上肢に一定の機能障害が残っている場合には、障害手当金の対象となる可能性があります。
認定基準では、例えば一上肢の3大関節のうち1関節について筋力が半減している状態が例示されています。
また、前腕の回内・回外の他動可動域が健側の4分の1以下に制限されている場合も、同程度の障害として取り扱われます。
腕や指を切断している場合―欠損障害
上肢の障害では、腕や指の機能だけでなく、切断・離断による「欠損障害」についても明確な認定基準があります。
認定基準で「上肢の指を欠くもの」という場合は、基節骨の基部から指を欠き、有効長が0になっている状態を意味します。
また、「指を失ったもの」という表現は少し意味が異なり、親指ではIP関節、その他の指ではPIP関節以上の部分で欠いている状態をいいます。
例えば、両上肢のすべての指を基部から欠く場合は1級、一上肢のすべての指を基部から欠く場合は2級など、失った指の本数や部位によって等級が定められています。
厚生年金では、親指・人差し指を含む一定本数の指を失った場合などについて3級や障害手当金の基準も設けられています。
なお、切断・離断の場合には、原則として切断または離断した日が障害の程度を認定する時期となります。
ただし、その日が初診日から1年6か月を超える場合などは別の取扱いとなり、障害手当金の場合は創面が治った日が基準になります。
骨折後の偽関節や骨の変形―変形障害
上肢の骨折などの後、骨が正常につながらず偽関節となった場合や、大きな変形を残した場合も障害年金の対象となることがあります。
偽関節が残った場合
上腕骨に偽関節を残し、運動機能に著しい障害がある場合、または橈骨と尺骨の両方に偽関節を残し、運動機能に著しい障害がある場合は、障害厚生年金3級の認定対象となります。
運動機能に著しい障害まではなくても、上腕骨、橈骨または尺骨に偽関節が残っている場合には、障害手当金相当として認定されることがあります。
なお、ここでいう偽関節は骨幹部または骨幹端部にあるものが対象です。
骨が大きく曲がってつながった場合
上腕骨、橈骨または尺骨に著しい転位変形が残っている場合も、障害手当金の対象となることがあります。
ここでいう「変形」とは、単にレントゲン上変形しているだけではなく、外から見てもわかる程度で、15度以上曲がった状態で不正癒合している場合を指します。
一方、骨折した部分が正しい方向に、短縮することなく癒合している場合は、その部分に骨の盛り上がりや肥厚が残っていても、原則として認定基準上の「長管状骨の変形」としては扱われません。
上肢の障害は「可動域の数字だけ」で決まるわけではありません
上肢の障害年金で特に重要なのは、診断書に記載された可動域の数値だけで判断されるわけではないという点です。
原則として患側の関節可動域を健側と比較しますが、両腕に障害がある場合には参考可動域を用います。そして、各関節について、可動域に加えて、
筋力、巧緻性、動作の速さ、耐久性
なども考慮されます。
特に末梢神経障害などで、他動的には関節を動かせても、自分の力では十分に動かせないケースでは、単純な可動域測定だけでは障害の実態を表せません。
そのような場合には、筋力や巧緻性、速さ、耐久性、日常生活動作などから総合的に判断されます。
下肢の障害
◆1級
・両下肢の機能に著しい障害を有するもの(以下「両下肢の用を全く廃したもの」という。)
・両下肢を足関節以上で欠くもの
◆2級
・両下肢のすべての指を欠くもの(以下「両下肢の10趾を中足趾節関節以上で欠くもの」という。)
・一下肢の機能に著しい障害を有するもの(以下「一下肢の用を全く廃したもの」という。)
・一下肢を足関節以上で欠くもの
・身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であって、
日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの
◆3級
・一下肢の3大関節のうち、2関節の用を廃したもの
・長管状骨に偽関節を残し、運動機能に著しい障害を残すもの
・一下肢をリスフラン関節以上で失ったもの
・両下肢の10趾の用を廃したもの
・身体の機能に、労働が著しい制限を受けるか、
又は労働に著しい制限を加えることを必要とする程度の障害を残すもの
下肢の障害による障害年金
下肢の障害とは、股関節・膝関節・足関節が動かしにくい場合、脚に十分な力が入らない場合、足の指を自由に動かせない場合、立つ・歩く・階段を上り下りするといった動作が困難な場合、脚や足の指を切断している場合、骨折後に偽関節や骨の変形が残っている場合などをいいます。
障害年金の認定基準では、下肢の障害を、機能障害、欠損障害、変形障害、短縮障害の4つに区分しています。
上肢の障害が機能障害・欠損障害・変形障害の3区分であるのに対し、下肢には脚の長さの差を評価する「短縮障害」が設けられている点が大きな特徴です。
また、障害年金では、単に「膝が何度まで曲がるか」「足首が何度まで動くか」という関節可動域だけで判断されるわけではありません。
関節の動く範囲、筋力、下肢の巧緻性、動作の速さ、耐久性、そして実際の立位・歩行・階段昇降などにどの程度支障があるかを総合的にみて認定されます。
日本年金機構の認定基準でも、各関節の評価にあたっては、可動域だけでなく、筋力・巧緻性・速さ・耐久性を考慮するとされています。
下肢の「3大関節」とは
障害年金でいう下肢の3大関節とは、股関節、膝関節、足関節です。
関節の動きについては、股関節では屈曲・伸展、膝関節では屈曲・伸展、足関節では背屈・底屈が主な運動として評価されます。
また、足の指については屈曲・伸展が評価されます。
原則として患側の関節可動域を健側と比較しますが、両脚に障害がある場合には、認定基準に定められた参考可動域を用いて評価します。
両脚がほとんど使えない場合
両下肢の機能に著しい障害があり、「両下肢の用を全く廃したもの」と認められる場合は、障害年金1級の対象となります。
認定基準では、両脚それぞれについて、3大関節のうち2関節以上が、次のいずれかに該当する状態が目安とされています。
- 日常の動作に適さない位置で関節が固まっている
- 他動可動域が参考可動域の2分の1以下に制限され、さらに筋力も半減している
- 筋力が著しく低下している、または消失している
ただし、形式的に2関節以上が該当していなくても、例えば両方の膝が100度屈曲した位置で固まり、両脚を歩行に使うことができない場合には、「両下肢の用を全く廃したもの」と認定されることがあります。
両脚に障害がある場合は、片脚だけに障害がある場合よりも、立つ、歩く、移動する、階段を利用するといった日常生活への影響が大きくなるため、実際の生活動作を考慮して総合的に認定されます。
片脚がほとんど使えない場合
一下肢の機能に著しい障害があり、「一下肢の用を全く廃したもの」と認められる場合は、障害年金2級の対象となる可能性があります。
具体的には、一方の脚について、3大関節のうち2関節以上が、
- 不良な位置で強直している
- 他動可動域が健側の2分の1以下に制限され、さらに筋力が半減している
- 筋力が著しく低下している、または消失している
といった状態が基準になります。
また、膝関節だけが100度屈曲した位置で固まっている場合など、形式上は1関節だけの障害であっても、その脚を歩行に使うことができないときは、「一下肢の用を全く廃したもの」と認定されることがあります。
両脚に相当程度の障害が残っている場合
両脚とも完全に使えない状態まで至っていなくても、両下肢に相当程度の機能障害が残り、日常生活が著しく制限されている場合には、2級に該当する可能性があります。
認定基準では、その例として、両下肢それぞれの3大関節のうち1関節について、他動可動域が参考可動域の2分の1以下に制限され、かつ筋力が半減している状態が示されています。
ここでも、数値だけではなく、屋内外の歩行、立ち上がり、階段の上り下りなどが、実際にどの程度できるかを含めて総合的に判断されます。
「関節の用を廃したもの」とは
障害認定基準上の「関節の用を廃したもの」とは、原則として、その関節の他動可動域が健側の2分の1以下に制限されている状態をいいます。
また、可動域の数字だけではなく、起床してから就寝するまで常に固定装具を必要とするほどの動揺関節なども、同程度の障害として扱われます。
なお、一つ一つの関節について使われる「関節の用を廃したもの」と、2級の基準である「一下肢の用を全く廃したもの」は同じ意味ではありません。
例えば、一下肢の3大関節のうち2関節が、それぞれ「関節の用を廃したもの」に該当する場合は、障害厚生年金3級の明示された基準です。
一方、2級の「一下肢の用を全く廃したもの」には、不良肢位での強直、可動域制限と筋力低下の組合せ、筋力の著減・消失など、より重い状態が求められます。
「関節に著しい機能障害を残すもの」とは
関節の他動可動域が健側の3分の2以下に制限されている場合や、常時ではないものの固定装具が必要となるほどの動揺関節、習慣性脱臼などは、「関節に著しい機能障害を残すもの」として評価されます。
さらに、3分の2以下まで制限されていなくても、他動可動域が健側の5分の4以下に制限されている場合などは、他の障害との併合認定の対象になることがあります。
足の指が動かない場合も障害年金の対象になります
足の指そのものが残っていても、著しい運動障害があり、実質的に使うことができない場合には、「足趾の用を廃したもの」と評価されることがあります。
認定基準では、例えば次のような場合が該当します。
- 第1趾では、末節骨の2分の1以上を失っている
- その他の4趾では、遠位趾節間関節、いわゆるDIP関節以上の部分を失っている
- 中足趾節関節・近位趾節間関節に著しい運動障害がある
- 第1趾について、趾節間関節に著しい運動障害がある
ここでいう著しい運動障害とは、原則として、該当する関節の他動可動域が健側の2分の1以下に制限されている状態です。
両足の10趾すべての用を廃した場合は、障害厚生年金3級の対象となります。また、片足の5趾すべての用を廃した場合は、障害手当金の対象となる可能性があります。
第1趾は他の足趾と区別して扱われます
足の親指にあたる第1趾は、認定基準上、他の4趾とは区別して扱われています。
例えば、一下肢の第1趾を失った場合は、それだけで障害手当金の基準の一つになります。一方、第1趾以外の足趾については、4趾以上を失った場合が同じ基準として定められています。
仕事に著しい制限がある場合
厚生年金に加入していた方の場合、1級・2級ほどではなくても、下肢の障害によって仕事が著しく制限される場合には、障害厚生年金3級に該当する可能性があります。
認定基準では、一下肢の3大関節のうち2関節の用を廃した場合が、3級の基準として明示されています。
また、労働が著しく制限される程度の障害の例として、
- 一下肢の3大関節のうち1関節が不良な位置で強直している
- 両下肢それぞれの3大関節のうち1関節の筋力が半減している
といった状態が示されています。
両脚に障害がある場合には、片脚だけに障害がある場合よりも日常生活動作への影響が大きくなるため、実際の歩行や立ち上がりなども考慮して総合的に認定されます。
人工関節・人工骨頭を入れている場合
股関節、膝関節、足関節などの下肢の3大関節について、人工骨頭または人工関節に置換している場合にも、障害厚生年金の対象になることがあります。
原則として、一下肢の3大関節のうち1関節以上に人工骨頭または人工関節を挿入・置換している場合は3級として認定されます。
両下肢について、それぞれ1関節以上を人工骨頭または人工関節に置換している場合も3級とされます。
ただし、人工関節等に置換した後も重い機能障害が残っている場合には、一下肢であれば「一下肢の用を全く廃したもの」、両下肢であれば「両下肢に相当程度の障害が残るもの」などとして、2級以上に認定されることがあります。
一定の場合には、人工骨頭または人工関節を挿入・置換した日が障害の程度を認定する時期となります。
ただし、その日が初診日から1年6か月を超えている場合は、別の取扱いとなります。
一定程度の機能障害が残る場合
1級から3級には達しなくても、一下肢に一定の機能障害が残っている場合には、障害手当金の対象となる可能性があります。
認定基準では、例えば次のような状態が挙げられています。
- 一下肢の3大関節のうち1関節に著しい機能障害が残っている
- 一下肢の3大関節のうち1関節の筋力が半減している
障害手当金は厚生年金の制度であり、障害の状態に加えて、傷病が治った状態にあることなどの要件も個別に確認されます。
脚や足の指を切断している場合―欠損障害
下肢の障害では、脚や足趾の機能だけでなく、切断・離断による「欠損障害」についても明確な認定基準があります。
主な等級の目安は次のとおりです。
- 両下肢を足関節以上で欠く場合は1級
- 一下肢を足関節以上で欠く場合は2級
- 両下肢の10趾すべてを中足趾節関節以上で欠く場合は2級
- 一下肢をリスフラン関節以上で失った場合は3級
- 一下肢の第1趾、または第1趾以外の4趾以上を失った場合は障害手当金
認定基準で「足関節以上で欠くもの」という場合は、ショパール関節以上の部分で欠いている状態をいいます。
また、「趾を欠くもの」とは、中足趾節関節、いわゆるMP関節から欠いている状態です。
切断・離断の場合には、原則として、切断または離断した日が障害の程度を認定する時期となります。
ただし、その日が初診日から1年6か月を超える場合などは別の取扱いとなり、障害手当金については創面が治った日が基準になります。
骨折後の偽関節や骨の変形―変形障害
下肢の骨折などの後、骨が正常につながらず偽関節となった場合や、大きな変形を残した場合も、障害年金の対象となることがあります。
偽関節が残った場合
大腿骨または脛骨に偽関節を残し、運動機能に著しい障害がある場合は、障害厚生年金3級の認定対象となります。
運動機能に著しい障害まではなくても、大腿骨または脛骨に偽関節が残っている場合には、障害手当金相当として認定されることがあります。
ここで対象となる偽関節は、骨幹部または骨幹端部にあるものに限られます。
骨が大きく曲がってつながった場合
大腿骨または脛骨に著しい転位変形が残っている場合も、障害手当金の対象となることがあります。
腓骨だけに変形が残っている場合でも、その程度が著しいときは対象となる可能性があります。
認定基準上の「変形」とは、単にレントゲン上で変形が確認できるというだけではなく、外から見ても分かる程度で、15度以上曲がった状態で不正癒合している場合をいいます。
一方、骨折した部分が正しい方向に、短縮することなく癒合している場合は、その部分に骨の盛り上がりや肥厚が残っていても、原則として長管状骨の変形としては扱われません。
下肢には「短縮障害」があります
下肢の障害には、上肢には設けられていない独立した認定区分として「短縮障害」があります。
短縮障害とは、骨折後の変形、成長障害、手術などによって左右の脚の長さに差が生じた状態をいいます。
認定上の下肢長は、見た目だけで判断するのではなく、骨盤の上前腸骨棘から、足首の内側にある脛骨内果の先端までを結ぶ直線距離によって測定します。
健側の長さの4分の1以上短縮している場合
一下肢が健側の長さの4分の1以上短縮している場合は、「一下肢の用を全く廃したもの」に該当するものとして扱われます。
そのため、障害の状態としては2級に相当する可能性があります。
10センチ以上または健側の10分の1以上短縮している場合
一下肢が健側より10センチ以上短い場合、または健側の長さの10分の1以上短縮している場合は、「一下肢の機能に相当程度の障害を残すもの」として扱われます。
厚生年金に加入していた方については、障害厚生年金3級に該当する状態となります。
3センチ以上短縮している場合
一下肢が3センチ以上短縮している場合は、障害手当金の基準として明示されています。
短縮障害については、関節可動域が比較的保たれていても、脚長差によって歩行、立位、階段昇降などに支障が生じることがあるため、関節の角度とは別に評価される点が重要です。
歩行や階段などの日常生活動作も重要です
下肢の障害について、認定基準が日常生活動作の目安として挙げているのは、主に次の動作です。
- 片足で立つ
- 屋内を歩く
- 屋外を歩く
- 立ち上がる
- 階段を上る
- 階段を下りる
単に「歩けるか、歩けないか」だけではなく、動作を安全かつ安定して行えるか、動作に時間がかからないか、繰り返し行えるかといった点も、障害の実態を考えるうえで重要になります。
下肢の障害は「可動域の数字だけ」で決まるわけではありません
下肢の障害年金で特に重要なのは、診断書に記載された関節可動域の数値だけで判断されるわけではないという点です。
各関節については、可動域に加えて、筋力、巧緻性、動作の速さ、耐久性が考慮されます。
下肢における巧緻性とは、例えば、足を狙った位置に置く、段差に合わせて足を運ぶ、歩行中に方向を変えるといった動作を正確かつ滑らかに行えるかという側面です。
速さは、立ち上がりや歩行などの動作にどの程度時間がかかるか、耐久性は、立位や歩行をどの程度続けられるかという実際の動作状況に表れます。
特に末梢神経損傷などにより、他動的には関節を動かせても、自分の力では脚を十分に動かせないケースでは、単純な他動可動域の測定だけでは障害の実態を表せません。
そのような場合には、筋力・巧緻性・速さ・耐久性を考慮し、片足立ち、屋内外の歩行、立ち上がり、階段昇降などの日常生活動作から、下肢の障害が総合的に認定されます。
したがって、下肢の障害年金では、「関節が基準より数度多く動くから対象外」「自宅の中を少し歩けるから障害は軽い」と単純に判断することはできません。実際にどのように立ち、歩き、移動しているか、どの程度の速さと安定性で動けるか、その動作をどの程度続けられるかを含めて、障害の状態を捉えることが大切です。
※本稿は、日本年金機構が掲載している「令和4年4月1日改正版・国民年金・厚生年金保険 障害認定基準」の下肢の障害に関する基準をもとに、一般向けに整理したものです。実際の等級は、障害の状態、日常生活への影響、初診日に加入していた年金制度などを踏まえて個別に判断されます。
体幹・脊柱の機能の障害
◆1級
・体幹の機能に座っていることができない程度又は立ち上がることができない程度の障害を有するもの
・身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であって、
日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの
◆2級
・体幹の機能に歩くことができない程度の障害を有するもの
・身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であって、
日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの
◆3級
・脊柱の機能に著しい障害を残すもの
体幹・脊柱の機能の障害による障害年金
「体幹・脊柱の機能の障害」では、身体を支えることが難しい、座った姿勢を保つことができない、自力で立ち上がることができない、歩行が困難である、脊柱の動きが大きく制限されている、といった障害が認定の対象となります。
認定基準では、大きく「体幹の機能の障害」と「脊柱の機能の障害」に分けて考えます。
体幹の機能障害については、主に座る・立ち上がる・歩くといった身体を支える能力が重視され、1級・2級の認定基準が設けられています。
一方、脊柱の機能障害については、身体を支える「荷重機能」と、脊柱を曲げたり伸ばしたりする「運動機能」が評価され、障害厚生年金3級や障害手当金の基準が設けられています。
「体幹の機能の障害」とは
体幹とは、頭部と手足を除いた身体の中心部分を指します。
障害認定基準では、体幹の機能障害について、高度の体幹麻痺が残った脊髄性小児麻痺や脳性麻痺などによって生じるものとされています。
体幹の障害では、「腰が何度曲がるか」といった関節可動域を中心に判断するのではなく、
・座った姿勢を保つことができるか
・寝た状態や座った状態から自力で立ち上がれるか
・屋内・屋外をどのように移動しているか
といった、実際に身体を支えて日常生活を送る能力が重要になります。
1級の「座っていることができない程度」とは
1級の基準には、「体幹の機能に座っていることができない程度の障害」とあります。
ここでいう「座っていることができない」とは、単に長時間座っていることが難しいという意味ではありません。
認定基準では、腰掛け、正座、あぐら、横すわりのいずれもができない状態とされています。
したがって、「椅子なら短時間座れるが、長時間は難しい」という状態だけで直ちにこの基準に該当するわけではありません。
身体を自分で支えて座位をとること自体が極めて困難である、という非常に重い状態が想定されています。
1級の「立ち上がることができない程度」とは
同じく1級には、「体幹の機能に立ち上がることができない程度の障害」という基準があります。
これは、寝た状態または座った状態から、自分の力だけでは立ち上がることができない状態をいいます。
他人に身体を支えてもらったり、柱・杖・家具などにつかまったりして、初めて立ち上がることができる程度の障害が該当します。
つまり、「立ち上がるのに時間がかかる」というだけではなく、何にもつかまらず、自力だけで立ち上がることができるかが一つの重要なポイントになります。
例えば、
・ベッドから起き上がった後、家族に身体を支えてもらわなければ立てない
・椅子から立つ際には必ずテーブルや手すりにつかまる
・床からは自力では立ち上がることができない
など、実際にどのような方法で立ち上がっているかを確認することが大切です。
2級の「歩くことができない程度」とは
2級には、「体幹の機能に歩くことができない程度の障害」という基準があります。
言葉だけを見ると、「まったく歩けない状態」を想像するかもしれません。
しかし、障害認定基準上の意味は少し異なります。
認定要領では、室内では杖や松葉杖などを使わずに立って移動することができるものの、屋外では杖、松葉杖その他の補助用具が必要となる程度とされています。
したがって、「家の中を歩けるから2級にはならない」と単純に判断することはできません。
室内での歩行と屋外での歩行では、必要となる身体能力が異なります。
屋外では、距離が長くなるほか、段差、傾斜、道路の凹凸、人とのすれ違いなどにも対応しなければなりません。
そのため、
・自宅内では何とか歩ける
・屋外では杖がなければ危険
・長距離の外出では車椅子を使用している
・転倒のおそれがあるため家族が付き添っている
といった事情がある場合には、実際の移動状況を具体的に確認する必要があります。
「歩ける・歩けない」だけでは判断できません
体幹の障害では、単に「歩けますか」という質問に「はい」と答えるだけでは、障害の実態が十分に伝わらない場合があります。
例えば、「家の中なら歩けます」という場合でも、
壁や家具につかまりながら移動しているのか。
途中で休憩が必要なのか。
足元が不安定で転倒することがあるのか。
玄関の段差を一人で越えられるのか。
屋外では杖や歩行器が必要なのか。
スーパーや病院など長い距離では車椅子を利用しているのか。
によって、生活上の制限は大きく異なります。
したがって、診断書を作成してもらう際には、「できる・できない」だけでなく、どのような方法ならできるのかまで整理しておくことが重要です。
「脊柱の機能の障害」とは
一方、脊柱の機能障害は、脊柱の脱臼・骨折や強直性脊椎炎などによって生じるもので、認定基準では、「荷重機能障害」と「運動機能障害」という二つの面から評価します。
「荷重機能」とは、脊柱によって身体を支える機能です。
「運動機能」とは、身体を前後左右へ曲げたり、ひねったりする機能です。
脊柱の障害というと「腰や首がどのくらい曲がるか」に目が向きやすいのですが、障害年金では、身体を支えることができるかという荷重機能も非常に重要です。
認定基準でも、荷重機能障害は日常生活や労働への影響が大きいため、重視する必要があるとされています。
脊柱の障害では日常生活のどのような動作を見るのか
脊柱の機能障害について、認定基準では日常生活動作として主に次の動作を挙げています。
・ズボンを着たり脱いだりする
・靴下を履く
・正座、横すわり、あぐら、脚を投げ出した状態などで座る
・深くおじぎをする
・立ち上がる
これらの動作が、一人でどの程度できるかを確認します。
例えば、「靴下を履ける」といっても、
普通に前かがみになって履けるのか。
ベッドに横にならなければ履けないのか。
片足を持ち上げることができず、家族に履かせてもらっているのか。
では、障害の状態が大きく異なります。
ズボンの着脱や立ち上がりについても同様です。
どのような姿勢や方法を使っているのか、補助が必要なのかまで確認することが大切です。
脊柱の3級「著しい障害を残すもの」とは
障害厚生年金3級には、「脊柱の機能に著しい障害を残すもの」という基準があります。
認定基準では、脊柱または背部の軟部組織に明らかな器質的変化があり、脊柱の他動可動域が参考可動域の2分の1以下に制限されている状態をいいます。
脊柱の運動機能については、基本的には前屈・後屈を測定します。
ただし、脊柱全体の運動機能を確認する必要がある場合には、身体を左右にひねる回旋や、左右に倒す側屈についても測定して認定します。
障害手当金に該当する場合
3級までには至らなくても、脊柱に一定の機能障害が残っている場合には、障害手当金の対象となる可能性があります。
障害手当金の基準である、「脊柱の機能に障害を残すもの」とは、脊柱または背部の軟部組織に明らかな器質的変化があり、脊柱の他動可動域が参考可動域の4分の3以下に制限されている程度のものなどをいいます。
また、頭蓋骨と上位頸椎の間に著しい異常可動性が生じている場合も、この基準に含まれます。
なお、障害手当金は厚生年金の制度であり、障害の状態だけでなく、傷病が治った状態にあることなどの要件についても個別に確認が必要です。
背骨の一部分が動かなくても、それだけで等級が決まるわけではありません
脊柱の障害で注意したいのが、手術などによって脊柱の一部が固定されている場合です。
例えば脊椎固定術によって、手術をした部分だけを見ればまったく動かなくなっている場合があります。
しかし、人の脊柱は複数の椎骨によって構成されているため、固定された部分の上下にある脊柱が動きを補うことがあります。
そのため認定基準では、傷病の部位が癒合してその部分が動かなくなっていても、他の部分が代償して脊柱全体としての運動障害が軽い場合には、固定された一部分だけを見て認定するのではなく、脊柱全体の運動機能と日常生活動作を考慮して判断するとされています。
つまり、「背骨を固定する手術をしたから3級になる」というものではありません。
術後に脊柱全体としてどの程度動かなくなっているのか、また実際の日常生活や仕事にどの程度の支障が残っているのかを確認する必要があります。
可動域だけでなく「荷重機能」も重要です
脊柱の障害では、可動域の数字が重要な判断材料となります。
しかし、それだけで障害の状態を捉えられるとは限りません。
例えば、
・長時間座っていることができない
・数分立っていると身体を支えられなくなる
・コルセットがなければ身体を支えにくい
・重い物を持つことができない
・少し歩くと強い症状が出て休憩が必要になる
・姿勢を保つことができず、仕事を継続できない
といった状態では、脊柱の荷重機能に大きな問題が生じている可能性があります。
認定基準でも、荷重機能障害については日常生活や労働への影響が大きいため、重視する必要があるとされています。
したがって、診断書では脊柱可動域の数値だけを見るのではなく、その障害によって実際の生活や仕事がどの程度制限されているのかも重要になります。
2級では「日常生活が非常に不自由な状態」も重要です
2級の認定基準には、「身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が同程度以上と認められ、日常生活が著しい制限を受ける状態」も含まれています。
脊柱の機能障害について、認定要領では、このような状態を日常生活における動作は一人でできるものの非常に不自由である場合、またはそれに近い状態としています。
したがって、脊柱の障害についても、単純に3級の「可動域2分の1」という数値だけを見るのではなく、障害が非常に重く、日常生活全体が大きく制限されている場合には、その生活実態を正確に診断書へ反映してもらうことが重要です。
体幹・脊柱の障害は「実際にどう生活しているか」が重要です
体幹・脊柱の障害では、「座れる」「立てる」「歩ける」「前に曲げられる」というだけでは、障害の程度を十分に判断できないことがあります。
例えば、
椅子に座ることはできても背もたれがなければ姿勢を保てない。
立ち上がることはできても必ず手すりにつかまる必要がある。
室内は歩けても屋外では杖が必要になる。
靴下を履くためには特殊な姿勢を取らなければならない。
脊柱を曲げることはできても、短時間で強い疲労や症状が出る。
といった事情があるかもしれません。
このような場合には、単純に「できる」と伝えるだけでは、実際の日常生活上の制限が十分に伝わらない可能性があります。
障害年金を請求する際には、何ができないのかだけではなく、どのような方法ならできるのか、どの程度の補助が必要なのか、どのくらいの時間続けられるのかまで具体的に整理することが大切です。
診断書と実際の生活状況に相違がないようにすることが大切です
肢体の障害用診断書では、関節可動域などの医学的所見だけでなく、日常生活動作や補助用具の使用状況、日常生活活動能力、労働能力なども記載されます。日本年金機構も、障害年金の請求には「肢体の障害用」の診断書を使用することを案内しています。
しかし、主治医が患者さんの自宅での生活をすべて把握しているとは限りません。
診察室では椅子から立ち上がることができても、自宅ではベッドから起き上がる際に家族の介助を受けているかもしれません。
病院内では短い距離を歩けても、普段の外出では杖や車椅子を使用しているかもしれません。
そのため障害年金の申請では、普段どのように生活しているのかを整理し、実際の日常生活の状態と診断書の評価に大きな相違がないようにすることが重要です。
体幹・脊柱の障害では、可動域の数値だけでなく、「座る」「立ち上がる」「歩く」「着替える」「靴下を履く」といった日常の動作まで含めて、障害の状態を捉える必要があります。
「自分では歩けているので対象にはならないと思っている」
「脊椎の手術を受けたが、障害年金に該当するのかわからない」
「診断書を書いてもらったものの、この内容で障害の状態が伝わるのか不安」
という場合には、障害認定基準と実際の生活状況を照らし合わせながら、一つずつ確認していくことが大切です。
※本稿は、日本年金機構が掲載している「国民年金・厚生年金保険 障害認定基準 第7節 肢体の障害 第3 体幹・脊柱の機能の障害」をもとに、一般向けに整理したものです。実際の等級は、障害の状態、日常生活への影響、初診日に加入していた年金制度などを踏まえて個別に判断されます。
肢体の機能の障害(脳性麻痺、脊髄の器質障害、筋ジストロフィー等)
「肢体の機能の障害」とは、障害が一方の腕や脚だけに限られず、上肢と下肢など身体の広い範囲にわたって機能障害が生じている場合に用いられる認定方法です。
認定基準では、脳血管障害、脊髄損傷などの脊髄の器質障害、進行性筋ジストロフィーなどが例として挙げられています。
例えば、脳性麻痺、頚椎症性脊髄症、後縦靱帯骨化症、脊柱管狭窄症、脊髄損傷、脊髄腫瘍、進行性筋ジストロフィーなどでは、手が動かしにくい、細かな作業ができないといった上肢の障害と、立つ・歩くことが難しいといった下肢の障害が同時に現れることがあります。
このように障害が上肢・下肢の広い範囲に及んでいる場合には、上肢と下肢をそれぞれ別々に評価するのではなく、身体全体の機能と日常生活動作から総合的に障害の程度が認定されます。
「上肢の障害」「下肢の障害」と何が違うのか
これまで説明した「上肢の障害」「下肢の障害」では、例えば「3大関節のうち何関節に障害があるか」「他動可動域が健側の何分の1以下か」といった具体的な基準が多く設けられています。
一方、「肢体の機能の障害」では、こうした一つ一つの関節の数値だけで等級を判断するのではありません。
関節可動域、筋力、巧緻性、動作の速さ、耐久性を考慮したうえで、実際の日常生活動作がどの程度できるかによって身体機能を総合的に判断します。
例えば、関節そのものは他人が動かせばある程度動いたとしても、麻痺や筋力低下のため、自分の力では十分に腕や脚を動かすことができない場合があります。
このようなケースでは、関節可動域だけを見ても実際の障害の程度を正しく評価できません。
そのため認定基準でも、他動可動域による評価が適切でない場合には、筋力、巧緻性、速さ、耐久性や日常生活動作から総合的に認定することが明記されています。
どのような日常生活動作が確認されるのか
肢体の機能の障害では、上肢・下肢の検査結果だけでなく、実際の日常生活でどの程度身体を使うことができるのかが重要になります。
認定基準では、身体機能との関連を見る日常生活動作として、主に次のような動作が挙げられています。
手指の機能では「つまむ」「握る」「タオルを絞る」「ひもを結ぶ」、上肢の機能では「さじで食事をする」「顔を洗う」「用便の処置をする」「上衣を着脱する」、
下肢の機能では「片足で立つ」「屋内を歩く」「屋外を歩く」「立ち上がる」「階段を上る」「階段を下りる」などです。
なお、手指だけを上肢から切り離して評価するのではなく、手指の機能も上肢の機能の一部として取り扱われます。
1級の「用を全く廃したもの」とは
1級では、「一上肢及び一下肢の用を全く廃したもの」または、「四肢の機能に相当程度の障害を残すもの」が例示されています。
ここでいう「用を全く廃したもの」とは、単に手足がまったく動かない状態だけを意味するものではありません。
認定基準では、日常生活における動作のすべてが「一人で全くできない」、またはそれに近い状態とされています。
したがって、医学的な麻痺の程度だけではなく、食事、着替え、排せつ、立ち上がり、歩行など、日常生活全体を通して一人で行うことがほとんどできない状態なのかが重要になります。
2級の「機能に相当程度の障害を残すもの」とは
2級では、「一上肢及び一下肢の機能に相当程度の障害を残すもの」または、「四肢に機能障害を残すもの」が例示されています。
認定基準でいう「機能に相当程度の障害を残すもの」とは、日常生活動作の多くが「一人で全くできない」状態、または日常生活動作のほとんどが「一人でできるが非常に不自由」な状態をいいます。
ここで重要なのは、介助されている動作の数だけで判断するものではないという点です。
例えば、自分で食事をすることはできても非常に時間がかかる、着替えはできてもボタン掛けや衣服の着脱に強い困難がある、屋内は何とか歩けても転倒のおそれが強い、立ち上がる際には家具などにつかまる必要がある、といった状態も含めて身体機能を総合的にみていきます。
3級の「機能障害を残すもの」とは
障害厚生年金3級では、「一上肢及び一下肢に機能障害を残すもの」が例示されています。
「機能障害を残すもの」とは、日常生活動作の一部が「一人で全くできない」状態、または日常生活動作のほとんどが「一人でできてもやや不自由」な状態をいいます。
1級・2級ほど日常生活が大きく制限されていなくても、上肢と下肢の双方に障害があり、それによって労働が著しく制限されている場合には、障害厚生年金3級に該当する可能性があります。
なお、障害基礎年金には3級はありませんので、3級は初診日に厚生年金に加入していた方が対象となります。
上肢と下肢で障害の程度が違う場合
「手にも障害があるけれど、脚の障害の方がかなり重い」あるいは、「歩くことはある程度できるものの、腕や手指の麻痺が非常に重い」というケースもあります。
認定基準では、上肢と下肢の広い範囲に障害があり、上肢と下肢で障害の程度が異なる場合には、障害の重い肢によって障害の程度を判断するとされています。
つまり、「上肢と下肢を平均して等級を決める」という考え方ではありません。
身体全体の状態を確認したうえで、障害の重い部分と日常生活への影響を踏まえて認定されます。
障害が上肢または下肢だけの場合は認定方法が異なります
一方、障害の範囲が両上肢だけ、片方の上肢だけ、両下肢だけ、片方の下肢だけ、あるいは体幹・脊柱だけに限られている場合には、「肢体の機能の障害」ではなく、それぞれ「上肢の障害」「下肢の障害」「体幹・脊柱の機能の障害」の認定基準によって判断されます。
したがって、同じ病名であっても、どの認定基準が適用されるかは一律ではありません。
例えば脊髄の病気であっても、主な後遺症が下肢だけに現れているケースと、手指の巧緻運動障害と歩行障害の双方が現れているケースでは、認定の考え方が異なる場合があります。
傷病名だけではなく、障害が身体のどの範囲に及んでいるのかを確認することが大切です。
「できる・できない」だけではなく、どの程度できるのかが重要です
肢体の機能の障害で特に重要なのが、診断書に記載される日常生活動作です。
例えば、「歩くことができますか」と聞かれて、「家の中なら歩けます」と答えたとします。
しかし実際には、壁や家具につかまりながらでなければ歩けない、数メートルごとに休憩が必要になる、足がもつれて頻繁に転倒する、家族が近くにいなければ危険である、といった状態かもしれません。
同じように「食事はできます」といっても、箸を使えずスプーンを使用している、食べ物をこぼしてしまう、食事に非常に時間がかかる、食べ物をあらかじめ家族に切ってもらっている、という場合もあります。
障害年金では、こうした状態を単純に「できる」としてしまうと、実際の日常生活上の支障が十分に伝わらないことがあります。
日本年金機構も、適切な障害等級を決定するためには、診断書の内容ができる限り詳細かつ具体的に記載されることが重要としています。
巧緻性・速さ・耐久性にも注意が必要です
肢体の機能の障害では、関節可動域や筋力と並んで、巧緻性・速さ・耐久性も認定上考慮されます。
「巧緻性」とは、手指や手足を正確に動かす能力です。
手に力は入っても、震えや麻痺によってボタンを留めたり、小さな物をつまんだりすることが難しい場合があります。
「速さ」は、動作を実用的な速度で行えるかという点です。
着替えること自体はできても非常に長い時間を要する場合には、日常生活上の支障があります。
「耐久性」は、その動作をどの程度続けられるかという点です。
少しの距離なら歩けても、それ以上歩くと脚に力が入らなくなる、短時間なら立っていられても長時間は難しい、といった状態があります。
したがって、一度その動作ができたというだけで、障害が軽いと判断されるわけではありません。
肢体の機能の障害は「日常生活動作を正しく伝えること」が重要です
上肢や下肢だけの障害では、関節可動域や筋力について具体的な数値基準が認定の重要な目安となります。
これに対して、上肢と下肢など広範囲に障害が及ぶ「肢体の機能の障害」では、関節可動域や筋力だけではなく、身体全体を使って実際の日常生活をどの程度行えるのかが特に重要になります。
そのため、「歩けるから大丈夫」「自分で食事ができるから障害年金は難しい」「手足は多少動くので対象にはならない」と単純に判断することはできません。
どのような姿勢や方法ならできるのか、どのくらい時間がかかるのか、途中で休憩が必要なのか、家族の見守りや介助を受けているのか、転倒などの危険がないかまで含めて、実際の生活状況を捉える必要があります。
また、日常生活の様子を主治医がすべて把握しているとは限りません。
障害年金を請求する際には、ご本人やご家族が普段どのようなことで困っているのかを整理し、実際の日常生活の状態と診断書の評価に大きな相違が生じないようにすることが大切です。
※本稿は、日本年金機構が掲載している「国民年金・厚生年金保険 障害認定基準 第7節 肢体の障害 第4 肢体の機能の障害」をもとに、一般向けに整理したものです。実際の等級は、障害の状態、日常生活への影響、初診日に加入していた年金制度などを踏まえて個別に判断されます。
難病(当事務所の成功事例)
進行性核上性麻痺、脳脊髄液減少症、ハンチントン病、シャルコー・マリー・トゥース病、慢性疲労症候群、線維筋痛症、重症筋無力症、多発性硬化症、多系統萎縮症、脊髄小脳変性症、関節リウマチ、特発性間質性肺炎、多発血管炎性肉芽腫症(ウェゲナー肉芽腫症)、全身性エリテマトーデス、皮膚筋炎/多発性筋炎、全身性強皮症、ベーチェット病、特発性血小板減少性紫斑病、混合性結合組織病、シェーグレン症候群、特発性拡張型心筋症、IgA 腎症、頚椎症性脊髄症、後縦靱帯骨化症、脊柱管狭窄症、特発性大腿骨頭壊死症、網膜色素変性症、クローン病、潰瘍性大腸炎、筋ジストロフィー、ニューロパチー、ファブリー病、ポリオ、ポストポリオ、サルコイドーシス
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めまい(平衡機能)の障害年金
めまい(平衡機能)で障害年金の対象となるのは、内耳に原因がある病気(メニエール、ラムゼイハント症候群など)と、小脳や脳幹に原因がある病気(脳出血 ・脳梗塞・脳腫瘍・小脳失調など)がございます。
なお、めまいで代表的な病気として、「良性発作性頭位めまい症」もございますが、以前、当センターで障害年金を請求したときは不支給になりました。不支給理由を審査に問い合わせた結果、「治療すれば治るから」との回答でした。やはり、障害年金の認定で重視されるのは、治療しても治らない状態が重要なのだと実感いたしました。
最近新たに、調べても調べても原因不明なめまいとして「P.P.P.D.」もございます。内耳性でも脳性でもないのですが、当センターでは、審査に時間はかかったものの認定された実績がございます。これは日常生活に著しい支障があることを主張して認定された例です。
また、精神や自律神経症状からくるめまいは、平衡機能の障害年金ではなく、精神の障害年金として、他に心因性による動作制限以外に精神症状があれば請求します。
各等級の例としては、以下のようになります。
なお、めまい(平衡機能)の障害年金に1級はございません!!!
| 等級 | 障害の状態 |
|---|---|
| 2級 |
平衡機能に著しい障害を有するもの |
| 3級 |
神経系統に、労働が著しい制限を受けるか、又は労働に著しい制限を加えることを必要とする程度の障害を残すもの |
| 障害手当金 | 神経系統に、労働が制限を受けるか、又は労働に制限を加えることを必要とする程度の障害を残すもの |
「平衡機能に著しい障害を有するもの」とは、次のとおりです。
四肢体幹に器質的異常がない場合に、開眼で起立・立位保持が不能又は開眼で直線を歩行中に10メートル以内に転倒あるいは著しくよろめいて歩行を中断せざるを得ない程度のものをいう。
四肢体幹に器質的異常がない場合なので、身体に問題がないがふらつく状態のことを指すのだと思います。
「労働に著しい制限を受ける」とは、次のとおりです。
閉眼で起立・立位保持が不安定で、かつ、開眼で直線を10メートル歩いたとき、多少転倒しそうになったりよろめいたりするがどうにか歩き通す程度のもの(中等度の平衡機能障害)で、労働能力が明らかに半減しているもの
「労働が制限を受ける」とは、次のとおりです。
めまいの自覚症状が強く、他覚所見として眼振その他平衡機能検査の結果に明らかな異常所見が認められ、かつ、労働が制限を受けるか又は労働に制限を加えることを必要とする程度のもの
めまいの障害年金は、簡単なようで難しいと思います。
障害年金を専門とする社会保険労務士と実際に会い、ふらつきの程度を実際の目で見てもらった方が、有効なアドバイスをもらえると感じていただけましたら幸いです。
聴力の障害年金
聴覚障害の程度は、原則として「平均純音聴力レベル」と「最良語音明瞭度」によって判断されます。
生活上の支障を書けば数値基準が達していなくても補えるというわけではありません。
平均純音聴力レベルは、オージオメータを用いて測定した500Hz、1,000Hz、2,000Hzの聴力を所定の計算式に当てはめて算出します。
障害年金1級
両耳の平均純音聴力レベルが、それぞれ100デシベル以上の状態です。
音がほとんど聞こえず、日常生活においても、筆談、手話、読話などによるコミュニケーションが必要となる程度が想定されます。
なお、これまで聴覚障害による障害年金を受給していない方について、新たに1級に該当する診断を行う場合には、通常のオージオメータ検査だけでなく、聴性脳幹反応検査、いわゆるABR検査などの他覚的聴力検査も必要です。検査方法や所見を診断書に記載し、検査記録の写しなどを添付することとされています。
障害年金2級
次のいずれかに該当する状態です。
1. 両耳の平均純音聴力レベルが、それぞれ90デシベル以上である場合
2. 両耳の平均純音聴力レベルが、それぞれ80デシベル以上で、かつ、最良語音明瞭度が30%以下である場合
2級では、単に音が聞こえにくいだけでなく、音として聞こえていても言葉の内容を正しく聞き分けられない状態も考慮されます。
障害厚生年金3級
次のいずれかに該当する状態です。
1. 両耳の平均純音聴力レベルが、それぞれ70デシベル以上である場合
2. 両耳の平均純音聴力レベルが、それぞれ50デシベル以上で、かつ、最良語音明瞭度が50%以下である場合
障害厚生年金3級は、初診日に厚生年金へ加入していた方が対象です。
初診日に国民年金へ加入していた方や、20歳前に初診日がある方については、障害基礎年金に3級がないため、原則として2級以上に該当する必要があります。
障害手当金
初診日に厚生年金へ加入しており、症状が固定したものの障害厚生年金3級には該当しない場合には、障害手当金という一時金の対象になることがあります。
聴覚障害では、一耳の平均純音聴力レベルが80デシベル以上である状態が基準として定められています。
ただし、障害手当金には症状固定や請求期限などの要件があるため、検査数値だけで受給が決まるものではありません。
視力の障害年金
- 両眼の視力の和が0.04以下のものは、1級。
- 両眼の視力の和が0.05以上0.08以下のものは、2級。
- 両眼の視力が0.1以下に減じたものは、3級。
- 両眼の視力が0.6以下に減じたものは、障害手当金
- 一眼の視力が0.1以下に減じたものは、障害手当金
※上記は、矯正視力の場合です。

