外国人も障害年金を請求できる?母国へ帰国すると?

日本で生活し、働いている外国人の方も、一定の要件を満たせば、日本人と同じように障害年金を受給できます。
障害年金の請求に国籍は関係ありません。
日本国内に住む20歳以上60歳未満の方は、原則として国籍を問わず国民年金または厚生年金保険に加入します。
また、厚生年金保険の適用事業所で働く方も、国籍にかかわらず加入対象になります。
ただし、外国人の障害年金請求では、在留歴、氏名の表記、海外での受診歴、帰国予定など、日本人の請求とは異なる確認が必要になることがあります。
本記事では、外国人の方が障害年金を請求するときの注意点や添付書類、母国へ帰国した場合の取扱いについて解説します。

1.外国人でも障害年金を受給できる

障害年金の受給要件は、原則として日本人と外国人で同じです。
主に、次の3つの要件を確認します。

① 初診日の要件

障害の原因となった病気やけがについて、初めて医師または歯科医師の診療を受けた日を「初診日」といいます。
外国人の場合も、初診日に日本の年金制度へ加入していたかどうかが重要です。
単に日本に滞在していた、在留カードを持っていた、会社で働いていたというだけではなく、実際の年金加入記録を確認する必要があります。

② 保険料納付要件

原則として、初診日の前日において、初診日のある月の前々月までの被保険者期間のうち、保険料納付済期間と免除期間を合わせた期間が3分の2以上必要です。
また、一定の期間内に初診日がある場合には、直近1年間に保険料の未納がないことを条件とする特例が適用されることがあります。
外国人の方は、来日後に国民年金の加入手続きが行われていなかったり、退職後の国民年金保険料が未納になっていたりすることがあります。
収入が少なく保険料の納付が難しい場合でも、未納のまま放置せず、保険料免除や納付猶予、学生納付特例の手続きをしておくことが大切です。
日本年金機構も、保険料の納付が難しい場合には速やかに免除申請を行うよう案内しています。

③ 障害状態の要件

障害認定日または請求時点において、病気やけがによる障害の程度が、法令で定められた障害等級に該当している必要があります。
障害基礎年金は1級または2級、障害厚生年金は1級から3級が対象です。
障害厚生年金の場合、3級より軽い一定の障害について障害手当金が支給されることもあります。
在留資格や国籍ではなく、病気や障害によって日常生活や労働にどの程度の制限が生じているかが審査されます。

2.外国人の障害年金請求で特に注意したいこと

氏名の表記を統一する

外国人の場合、書類によって氏名の表記が異なっていることがあります。
例えば、次のような違いです。
・姓と名の順番が異なる
・ミドルネームが記載されている書類と省略されている書類がある
・カタカナ表記とアルファベット表記が混在している
・結婚などにより氏名が変わっている
・在留カード、パスポート、年金記録、健康保険証で表記が異なる
氏名が一致しないと、年金記録や医療記録が同一人物のものか確認するため、追加資料を求められることがあります。
年金請求書には、基礎年金番号に登録されている氏名を基本として記載し、表記が異なる理由を説明できるようにしておきましょう。
必要に応じて、パスポート、在留カード、旧氏名が確認できる書類などを添付します。

基礎年金番号が複数ないか確認する

勤務先や氏名表記が変わったことなどにより、誤って複数の基礎年金番号が作られているケースがあります。
年金記録が分かれていると、本来の加入期間や保険料納付期間が正しく確認できない可能性があります。
複数の基礎年金番号通知書や年金手帳を持っている場合は、請求前に年金事務所で記録を統合してもらう必要があります。

初診日が海外の医療機関である場合

障害の原因となった病気について、母国など海外の医療機関を最初に受診していることがあります。
この場合、日本の医療機関を初めて受診した日ではなく、海外で最初に診療を受けた日が初診日になる可能性があります。
例えば、母国で精神疾患や脳血管疾患、糖尿病などの治療を受けた後に来日し、日本でも同じ病気の治療を続けている場合です。
海外の初診日が、日本の年金制度に加入する前であったときは、原則としてその病気による障害年金を日本で請求できない可能性があります。
したがって、病歴を確認するときは、日本国内の受診歴だけでなく、来日前の受診歴も正確に確認しなければなりません。

日本語での意思疎通が難しい場合

診察時に症状や日常生活上の困難を十分に医師へ伝えられていないことがあります。
特に精神障害や発達障害、内部障害の請求では、検査数値だけでなく、日常生活や就労上の支障が診断書に反映されているかが重要です。
日本語での説明が難しい場合は、通訳者や日本語を理解する家族、支援者に同席してもらうことも検討します。
ただし、家族が本人の症状を軽く説明してしまったり、逆に本人の意思と異なる説明をしてしまったりすることもあります。
通訳を介する場合でも、本人の日常生活の実態が正確に伝わるよう、事前に内容を整理しておくことが大切です。

3.外国人の障害年金請求に必要な書類

基本的な請求書類は、日本人の場合と大きく変わりません。
外国人の場合は、戸籍謄本に代えて、本国の公的機関が発行した婚姻証明書、出生証明書、家族関係証明書などが必要になることがあります。
ただし、戸籍謄本が必要な場合、配偶者が日本人であればその配偶者側から見た戸籍謄本を提出すれば足ります。

4.外国語で作成された書類には日本語訳を付ける

母国の医療機関や行政機関が作成した書類が外国語である場合は、原則として日本語訳を添付して提出します。
日本年金機構も、海外から日本語以外の文書を送付する場合には、できる限り日本語訳を添付するよう案内しています。
翻訳について、必ずしもすべての書類で公的な翻訳証明が必要になるとは限りませんが、少なくとも次の事項は明らかにしておくのが望ましいでしょう。
・翻訳者の氏名
・翻訳者の住所または連絡先
・翻訳した日
・原文と翻訳文の対応関係
医療用語を含む診断書や診療記録については、翻訳内容の正確性が審査に影響することがあります。
可能であれば、医療文書の翻訳経験がある翻訳者へ依頼することをおすすめします。
なお、日本年金機構では、外国の医療機関に作成を依頼する場合に使用できる英字版の診断書、受診状況等証明書、病歴・就労状況等申立書を用意しています。
外国の医師へ作成を依頼する場合には、診断書の種類や記載対象日を誤らないよう、作成依頼前に年金事務所等へ相談することが推奨されています。

5.母国へ帰国したら、障害年金の受給権はなくなる?

原則として、帰国だけで受給権はなくならない

通常の障害基礎年金や障害厚生年金は、外国人が母国へ帰国し、日本に住所がなくなったことだけを理由として受給権が消滅するものではありません。
すでに障害年金を受給している方は、所定の手続きを行うことにより、海外居住中も引き続き年金を受け取ることができます。
また、帰国前に請求していなかった場合でも、受給要件を満たしていれば、海外から障害基礎年金または障害厚生年金を請求できる場合があります。
日本年金機構も、海外居住者が請求できる給付として障害基礎年金と障害厚生年金を案内しています。
もっとも、海外からの請求では、診断書の取得、初診日証明、本人確認、書類の翻訳、郵送などに時間がかかる傾向があります。
帰国予定が決まっている場合は、できるだけ帰国前に請求準備を始めることが望ましいでしょう。

20歳前傷病による障害基礎年金は注意が必要

初診日が20歳前にある「20歳前傷病による障害基礎年金」は、通常の障害基礎年金とは取扱いが異なります。
20歳前傷病による障害基礎年金を受給している方が海外へ転出した場合、その海外居住期間中は年金が支給停止になります。
この場合、受給権そのものが直ちに消滅するわけではありませんが、海外居住中は支払いを受けることができません。
海外へ転出する際には、支給停止事由該当届の提出が必要です。
これは外国人に限った制度ではなく、日本人であっても同様です。

年金生活者支援給付金も海外転出により支給されない

障害基礎年金に上乗せして年金生活者支援給付金を受けている場合、海外へ転出すると、年金生活者支援給付金は支給されません。
通常の障害年金が海外でも受給できる場合であっても、年金生活者支援給付金は別の取扱いになります。

6.海外で障害年金を受け取るための手続き

障害年金の受給者が海外へ転出する場合は、「外国居住年金受給権者 住所・受取金融機関 登録(変更)届」を提出します。
海外の金融機関へ送金してもらう場合は、一般的に次の情報や資料が必要です。
・金融機関名
・支店名
・口座番号
・口座名義
・金融機関の所在地
・SWIFTコードまたはBICコード
・口座証明書
・通帳や小切手帳等の写し
・IBAN採用国ではIBAN
・国によって必要となる銀行識別番号
海外送金では、受取人が送金通貨を自由に選べるわけではなく、国ごとに送金通貨が指定されています。
海外居住者でも日本国内の金融機関口座を年金の振込先にすることはできますが、ゆうちょ銀行は指定できないとされています。

7.海外居住中も診断書の提出が必要になることがある

有期認定となっている障害年金受給者には、一定期間ごとに「障害状態確認届」と呼ばれる診断書が送付されます。
海外に居住していても、診断書の提出義務がなくなるわけではありません。
提出期限までに診断書を提出しなければ、障害年金の支払いが一時的に止まることがあります。
海外の郵便事情により障害状態確認届が届かない場合でも、書類が届くまで何もしなくてよいわけではありません。
日本年金機構は、郵便の到着を待たず、現況届などに診断書を添えて提出するよう案内しています。
帰国後に現地の医療機関へ診断書の作成を依頼する場合は、日本年金機構が用意している英字版の診断書を使用できます。
ただし、日本の障害年金診断書には、日本独自の評価項目があります。
現地の医師が記入方法を理解できるよう、記載内容を説明した資料を添えるなどの対応が必要になることがあります。

8.脱退一時金を請求する前に障害年金の可能性を確認する

外国人が日本を出国した場合、一定の要件を満たせば、国民年金または厚生年金保険の脱退一時金を請求できます。
しかし、病気やけがによる障害がある場合は、脱退一時金を請求する前に、障害年金の受給可能性を確認することが非常に重要です。
脱退一時金は、障害基礎年金や障害厚生年金などの年金を受ける権利を有したことがある方は、原則として支給対象になりません。
日本年金機構の支給要件にも、その旨が明記されています。
また、脱退一時金の支給を受けると、その計算の基礎となった日本の年金加入期間は、年金制度上、加入していなかったものとして扱われます。
そのため、安易に脱退一時金を請求すると、将来の老齢年金だけでなく、障害年金や遺族年金の判断に影響する可能性があります。
帰国時に病気の治療を続けている場合や、すでに日常生活・就労に大きな支障がある場合は、脱退一時金を請求する前に、障害年金の専門家や年金事務所へ相談することをおすすめします。

まとめ

外国人であっても、日本の年金制度に加入し、障害年金の受給要件を満たしていれば、障害基礎年金や障害厚生年金を請求できます。
また、通常の障害年金は、母国へ帰国したことだけを理由に受給権がなくなるものではなく、所定の手続きを行えば、原則として海外でも受け取ることができます。
ただし、20歳前傷病による障害基礎年金は、海外居住中は支給停止になるため注意が必要です。
外国人の障害年金請求では、日本人の場合以上に、初診日の確認、年金加入記録、氏名表記、出入国歴、海外の医療記録、翻訳書類などの整理が重要です。
また、帰国する外国人には脱退一時金という制度がありますが、障害年金を請求できる可能性がある場合は、脱退一時金の請求前に慎重な検討が必要です。
当事務所では、外国人の方の障害年金についても、初診日の確認、海外の医療機関への証明書作成依頼、外国語書類の整理、帰国後の請求手続きなどをサポートしています。
「外国人でも障害年金を受けられるのか分からない」「近く母国へ帰国する予定がある」「海外の病院を最初に受診している」といった場合は、帰国前のできるだけ早い段階でご相談ください。

※本記事は2026年8月時点の制度に基づいて作成しています。必要書類や取扱いは、請求者の年金加入歴、初診日、居住国、社会保障協定の内容などによって異なります。

 

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