全身性エリテマトーデスの障害年金
全身性エリテマトーデス(SLE)は、免疫機能の異常により、全身のさまざまな臓器に炎症が生じる自己免疫疾患です。
症状は人によって大きく異なり、発熱、強い倦怠感、関節痛、皮膚症状だけでなく、ループス腎炎、間質性肺炎、心膜炎、血球減少、精神神経症状などが現れることもあります。
また、症状が落ち着く「寛解」と悪化する「再燃」を繰り返しながら、慢性的に経過することが多い病気です。
SLEは指定難病ですが、指定難病であることや、病名が確定していることだけで障害年金が支給されるわけではありません。
障害年金では、病気によって日常生活や仕事がどの程度制限されているかが重要になります。
SLEの障害認定基準
SLEは、原則として障害認定基準の「その他の疾患による障害」に基づいて審査されます。
その他の疾患については、特定の検査数値だけで等級を決めるのではなく、次のような事情を総合的に考慮して認定するとされています。
- 全身状態や栄養状態
- 病気の性質や進行状況
- 治療の内容と治療効果
- 今後の見通し
- 具体的な日常生活の状況
- 就労の状況
- 各臓器に生じている障害の程度
難病については、症状が複雑かつ多岐にわたることから、客観的な医学所見に加え、日常生活能力の程度を十分に考慮して総合的に認定することとされています。
障害等級の目安は、次のとおりです。
障害年金1級
身体機能の障害や長期にわたる安静を必要とする病状により、日常生活のことを自分ではほとんど行えない程度です。
身の回りのことにも常時介助が必要で、活動範囲がおおむねベッドの周辺に限られている状態などが目安となります。
障害年金2級
日常生活が著しい制限を受け、日常生活を送るために相当な援助や配慮を必要とする程度です。
例えば、身の回りのことはある程度できても、しばしば家族の援助が必要である、日中の半分以上を横になって過ごす、単独での外出が難しいといった状態が考えられます。
障害年金3級
障害厚生年金だけに設けられている等級で、病状によって労働が著しく制限される程度です。
通常勤務が難しく、短時間勤務、軽作業、在宅勤務、頻繁な休憩などの配慮を受けなければ働けない場合や、欠勤・早退を繰り返している場合などが該当する可能性があります。
一般状態区分表では、身の回りのことはできるものの軽労働ができず、日中の半分以上は起きている状態が2級または3級の参考とされています。ただし、この区分だけで機械的に等級が決まるものではありません。
臓器障害がある場合は、別の認定基準が用いられることもあります
SLEでは、複数の臓器に障害が現れることがあります。
例えば、ループス腎炎による腎機能障害が強い場合には「腎疾患による障害」、間質性肺炎や肺高血圧症がある場合には「呼吸器疾患による障害」や「心疾患による障害」、関節や筋力低下によって手足の機能が低下している場合には「肢体の障害」の認定基準が検討されることがあります。
精神神経ループスによる認知機能の低下、抑うつ状態、精神症状などが中心の場合には、「精神の障害」として審査されることもあります。
SLEそのものを「その他の疾患」で評価するのか、特定の臓器障害を中心に評価するのかは、症状の内容と重症度によって異なります。
障害認定基準に直接示されていない障害については、その障害に最も近い認定基準に準じて判断するとされています。
SLEで障害年金を申請するときのポイント
1.検査結果だけでなく、日常生活の支障を具体的に伝える
SLEでは、血液検査の数値が一時的に安定していても、強い倦怠感、易疲労感、関節痛、微熱、日光過敏などが続き、日常生活に大きな支障が生じていることがあります。
そのため、単に「疲れやすい」「体調が悪い」と記載するだけではなく、具体的な状況を伝えることが大切です。
例えば、次のように説明します。
- 朝起きても強い倦怠感があり、着替えや身支度に時間がかかる
- 食事を作ることができず、家族や配食サービスに頼っている
- 掃除や洗濯は一度にできず、家族が代わっている
- 買物には一人で行けず、付き添いが必要である
- 外出した翌日は寝込んでしまう
- 入浴後に強い疲労が生じ、休息が必要になる
- 体調が悪い日は一日の大半を横になって過ごしている
「できるか、できないか」だけでなく、どの程度の時間を要するのか、途中で休憩が必要か、誰かの援助を受けているかまで記載することが重要です。
2.症状の波を診断書に反映してもらう
SLEは、寛解と再燃を繰り返すことが特徴です。
そのため、診断書を作成した日がたまたま症状の軽い時期だった場合、実際より軽い状態として伝わってしまうことがあります。
診断書には、診察当日の状態だけでなく、一定期間における症状の変動、再燃の頻度、入退院の状況、ステロイド増量や免疫抑制薬の変更なども記載してもらうことが大切です。
月に何日程度寝込むのか、体調が悪い状態が何日続くのか、再燃時にどの程度生活能力が低下するのかを、あらかじめ整理して主治医に伝えておきましょう。
3.複数の症状を漏れなく整理する
SLEでは、腎臓、肺、心臓、神経、血液、関節など、複数の部位に症状が生じる可能性があります。
しかし、診断書に一部の症状しか記載されていないと、全身への影響が十分に評価されないことがあります。
ループス腎炎、関節痛、筋力低下、息切れ、貧血、血小板減少、精神神経症状などが重なっている場合は、それぞれの症状と生活上の支障を整理し、総合的な状態が分かるようにする必要があります。
複数の診療科を受診している場合には、どの診療科の医師に診断書を依頼するか、複数の診断書を提出すべきかについても慎重な検討が必要です。
4.初診日を慎重に確認する
障害年金では、SLEと確定診断された日ではなく、SLEに関連する症状について初めて医師の診療を受けた日が初診日となる可能性があります。
確定診断の前に、発熱、関節痛、皮疹、倦怠感、血液異常、腎機能異常などで別の医療機関を受診していることも少なくありません。
最初は風邪、関節炎、皮膚疾患、腎炎など別の病名で診療を受け、その後にSLEと診断された場合でも、医学的な関連性が認められれば、以前の受診日が初診日となることがあります。
初診日を誤ると、加入していた年金制度、保険料納付要件、請求できる年金の種類に影響するため、受診歴を時系列で丁寧に確認する必要があります。
社会保険労務士に依頼するメリット
SLEの障害年金申請は、聴力や視力のように一つの検査数値だけで判断できるものではありません。
多彩な症状、日常生活への影響、症状の変動、就労上の制限などを、診断書と申立書の中で整合的に伝える必要があります。
社会保険労務士に依頼する主なメリットは、次のとおりです。
初診日の候補を整理できる
確定診断前の受診歴を確認し、どの医療機関の受診が初診日に当たる可能性があるかを整理します。
カルテが廃棄されている場合や、複数の医療機関を受診している場合にも、代替資料を含めた立証方法を検討できます。
適切な診断書を選択できる
SLEでは「血液・造血器・その他の障害用」の診断書を使用することが一般的ですが、主な障害が腎臓、呼吸器、心臓、肢体、精神などに現れている場合には、別の診断書が適切なこともあります。
日本年金機構では、障害の部位や疾患に応じて複数の診断書様式が用意されています。
症状の全体像を確認したうえで、どの診断書を使用するか、複数の診断書を提出するかを検討できる点は大きなメリットです。
医師に伝えるべき情報を整理できる
医師は治療の専門家ですが、患者の日常生活をすべて把握しているとは限りません。
社労士が事前に聞き取りを行い、日常生活上の支障、症状の波、家族の援助、就労上の配慮などを整理することで、診断書に実態を反映してもらいやすくなります。
ただし、診断書の内容を決定するのは医師であり、社労士が医学的判断に介入するものではありません。
診断書と申立書の食い違いを防げる
診断書には「日常生活は自立」と記載されている一方、申立書には「家族の全面的な援助が必要」と書かれているなど、提出書類の内容に大きな食い違いがあると、実態が正確に伝わりません。
社労士が書類全体を確認することで、症状、日常生活、就労状況が一貫して伝わる申請書類を作成できます。
まとめ
全身性エリテマトーデスの障害年金では、病名や一時点の検査数値だけでなく、病気によって日常生活や労働がどの程度制限されているかを具体的に評価することが重要です。
SLEは、症状が全身の複数の臓器に及び、寛解と再燃を繰り返すことが多い病気です。
また、強い倦怠感、易疲労感、疼痛などは外見や検査数値だけでは伝わりにくく、さらに、長年のステロイド治療や免疫抑制療法による副作用・後遺障害が残ることもあります。
実際の審査では、SLEの医学的な重症度分類や、痙攣、重度の精神症状、器質性脳障害、視力低下、血管炎といった重篤な症状の有無が重視されることがあります。また、「プレドニン5mgで安定している」といった現在の投薬量だけをもって、病状が軽いと評価されることもあります。
しかし、指定難病における重症度分類と、障害年金における障害等級の判断は同じものではありません。
障害年金では、全身状態、治療経過、原疾患の性質、進行状況、予後、薬剤の副作用、残存する後遺障害、具体的な日常生活状況などを総合的に判断することが求められています。
現在のステロイド量が少ない、あるいは検査数値が安定しているからといって、過去の大量投与や免疫抑制療法によって生じた大腿骨頭壊死、骨粗鬆症、筋力低下、易感染性、糖尿病、視力障害などの後遺障害まで軽くなるわけではありません。
また、プレドニンに加え、免疫抑制剤や生物学的製剤などを併用している場合には、複数の免疫抑制・免疫調整療法によって、ようやく病勢が抑えられている可能性もあります。
「病気が安定していること」と「障害が軽いこと」は別です。
SLEで障害年金を申請する際には、現在の検査結果や投薬量だけでなく、これまでの治療歴、再燃の頻度、薬剤の副作用、後遺障害、家族から受けている援助、日中に横になっている時間、外出や家事、就労への具体的な影響まで、丁寧に整理して伝える必要があります。
審査においてSLEという病気そのものの重症度だけが注目され、実際の生活上の障害が十分に評価されないこともあります。
そのため、診断書、病歴・就労状況等申立書、検査資料、治療歴などを通じて、「どの症状や後遺障害により、何ができず、どの程度の援助を必要としているのか」を一貫して示すことが大切です。
SLEの障害年金申請は、病状が多岐にわたり、使用する診断書や認定基準の判断も難しいケースが少なくありません。
不支給となった場合でも、判断の前提や評価方法が障害認定基準に沿っているかを検討する余地があります。
検査数値が安定している、働いている、ステロイド量が少ないという理由だけで諦めず、実際の日常生活や就労の状況を踏まえて受給可能性を検討することが重要です。

