聴覚の障害年金

「補聴器を使用しても会話が聞き取りにくい」「相手の口元を見なければ話の内容が分からない」「電話や職場でのコミュニケーションが難しい」など、聴覚の障害によって日常生活や仕事に大きな支障が生じている場合、障害年金の対象となる可能性があります。

聴覚障害の障害年金では、病名だけで判断されるのではなく、主に両耳の聴力レベルや語音明瞭度などの検査結果を基に障害等級が認定されます。

聴覚障害の障害認定基準

聴覚障害の程度は、原則として「平均純音聴力レベル」と「最良語音明瞭度」によって判断されます。
生活上の支障を書けば数値基準が達していなくても補えるというわけではありません。
平均純音聴力レベルは、オージオメータを用いて測定した500Hz、1,000Hz、2,000Hzの聴力を所定の計算式に当てはめて算出します。

障害年金1級

両耳の平均純音聴力レベルが、それぞれ100デシベル以上の状態です。
音がほとんど聞こえず、日常生活においても、筆談、手話、読話などによるコミュニケーションが必要となる程度が想定されます。
なお、これまで聴覚障害による障害年金を受給していない方について、新たに1級に該当する診断を行う場合には、通常のオージオメータ検査だけでなく、聴性脳幹反応検査、いわゆるABR検査などの他覚的聴力検査も必要です。検査方法や所見を診断書に記載し、検査記録の写しなどを添付することとされています。

障害年金2級

次のいずれかに該当する状態です。
1. 両耳の平均純音聴力レベルが、それぞれ90デシベル以上である場合
2. 両耳の平均純音聴力レベルが、それぞれ80デシベル以上で、かつ、最良語音明瞭度が30%以下である場合
2級では、単に音が聞こえにくいだけでなく、音として聞こえていても言葉の内容を正しく聞き分けられない状態も考慮されます。

障害厚生年金3級

次のいずれかに該当する状態です。
1. 両耳の平均純音聴力レベルが、それぞれ70デシベル以上である場合
2. 両耳の平均純音聴力レベルが、それぞれ50デシベル以上で、かつ、最良語音明瞭度が50%以下である場合
障害厚生年金3級は、初診日に厚生年金へ加入していた方が対象です。
初診日に国民年金へ加入していた方や、20歳前に初診日がある方については、障害基礎年金に3級がないため、原則として2級以上に該当する必要があります。

障害手当金

初診日に厚生年金へ加入しており、症状が固定したものの障害厚生年金3級には該当しない場合には、障害手当金という一時金の対象になることがあります。
聴覚障害では、一耳の平均純音聴力レベルが80デシベル以上である状態が基準として定められています。
ただし、障害手当金には症状固定や請求期限などの要件があるため、検査数値だけで受給が決まるものではありません。

「聞こえること」と「言葉を理解できること」は異なります

聴覚障害の認定で重要になるのが、純音聴力検査と語音明瞭度検査の違いです。
純音聴力検査は、どの程度の大きさの音まで聞き取れるかを測定する検査です。
一方、語音明瞭度検査は、音として聞こえた言葉を、どの程度正確に聞き分けられるかを測定します。
例えば、補聴器によって音量を大きくすれば音の存在は分かっても、言葉がゆがんで聞こえ、会話の内容までは理解できないことがあります。
そのため、聴力レベルが基準にわずかに届かないように見える場合でも、語音明瞭度によって2級または3級に該当する可能性があります。
日本年金機構の認定基準でも、聴覚障害は純音聴力レベルと語音明瞭度によって認定するとされています。

聴覚障害で社労士への相談を検討した方がよいケース

聴覚障害による障害年金は、平均純音聴力レベルや最良語音明瞭度などの検査数値を中心に認定されます。
そのため、検査結果が認定基準を明確に満たし、初診日や保険料納付要件にも問題がなければ、ご自身で手続きを進めることも可能です。
しかし、次のようなケースでは、検査数値以外の部分で請求が難しくなるため、障害年金を専門とする社会保険労務士への相談を検討した方がよいでしょう。

幼少期から難聴があり、初診日が分からないケース

先天性難聴や幼少期からの難聴では、最初に受診した医療機関が廃院している、カルテが廃棄されている、本人や家族の記憶が曖昧であるなど、初診日の証明が難しいことがあります。
障害年金では、原則として、障害の原因となった傷病について初めて医師または歯科医師の診療を受けた日が初診日となります。
転院している場合でも、現在の医療機関を受診した日ではなく、一番初めに診療を受けた日を確認しなければなりません。
初診の医療機関による証明が取れない場合など、初診日の整理が必要な案件は、専門家へ相談するメリットが大きいケースです。

難聴以外にも複数の障害があるケース

聴覚障害に加えて、音声・言語機能障害、肢体障害、視覚障害、精神障害、内部障害などがある場合には、複数の障害をどのように請求するかが問題になります。
複数の障害があるからといって、単純に等級を足し合わせるわけではありません。
それぞれの障害の程度や発生時期、初診日、前発障害と後発障害の関係などにより、併合認定、総合認定、初めて2級などの取扱いを検討します。
診断書を何種類提出するのか、どの制度によって請求するのかを含め、専門的な判断が必要となる場合があります。

難聴に加えて、めまいや平衡機能障害があるケース

メニエール病や内耳疾患などでは、難聴だけでなく、強いめまい、ふらつき、歩行障害、転倒などの平衡機能障害を伴うことがあります。
聴覚障害と平衡機能障害が併存する場合には、それぞれの障害を評価したうえで、併合認定の取扱いが行われることがあります。
聴力の検査数値だけでは2級に該当しなくても、平衡機能障害など他の障害と組み合わせることで、全体として上位等級に認定される可能性があります。
このようなケースでは、使用する診断書や併合認定の考え方を整理する必要があります。

人工内耳の手術前後で聴力や生活状況が変化しているケース

人工内耳の手術を受けた方については、手術前の聴力、手術後の検査結果、装用による改善の程度、障害認定日や請求日時点の状態を整理する必要があります。
人工内耳を装用しているという事実だけで、障害年金の受給可否や等級が決まるわけではありません。
どの時点の状態で請求するのか、診断書にどの検査結果を記載するのか、過去にさかのぼる請求が可能なのかを個別に検討する必要があります。

社労士へ依頼する意味は「数値を重く見せること」ではありません

聴覚障害では、日常生活や就労上の困難を詳しく記載しても、検査数値が認定基準に達していなければ、それだけで障害等級に認定されることは原則として困難です。
社労士へ依頼する主な意味は、日常生活での支障や聞こえにくさを強調することではなく、次の点を適切に整理することにあります。
・正しい初診日を確認する
・障害認定日請求と事後重症請求を適切に選択する
・必要な聴力検査や語音明瞭度検査を確認する
・診断書と検査記録の不整合や記載漏れを確認する
・平衡機能障害など他の障害を見落とさない
・併合認定や初めて2級などの可能性を検討する
・不支給理由や等級認定の妥当性を検討する

検査数値が明確に基準を満たしている場合でも、初診日の証明が難しいケースや、複数障害、再請求、不服申立てが関係する場合には、社会保険労務士へ相談する価値が高いといえます。
迷われましたら、聴覚の障害年金の実績も多く、併合認定も得意とする当センターへお尋ねください。

 

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