うつ病の障害年金申請|「まず現在分、決定してから遡及分を追加」で申請を組み立てた事例
この案件で難しかったのは、14年間診てもらっていた主治医が、あと1か月で退職するという時間的制約があったことでした。
通常どおりすべての書類がそろうまで待つのではなく、まず現在分の障害年金を急いで請求し、その審査中に障害認定日当時の診断書を準備して、後から遡及請求を追加する方法を取りました。
「主治医があと1か月で退職してしまう」とのご相談
ご本人が最初におっしゃったのは、「14年前から診てもらっている主治医が、あと1か月で退職してしまいます。その前に障害年金を請求したい」ということでした。
通常、障害年金の申請では、ヒアリング、病歴就労状況等申立書の作成、診断書の取得などに1か月半~2か月程度かかります。
しかし今回は、ご本人がすでに現在の診断書を病院へ依頼していました。
また、金銭的にも厳しい状況だったため、できるだけ早く年金事務所へ請求書類を提出する必要があると判断しました。
病歴を聞くと「遡及請求できる可能性」が見えてきた
病歴就労状況等申立書を作成するため詳しくお話を伺うと、初診日から1年6か月頃の障害状態についても、障害年金2級に該当していた可能性があることが分かりました。
そこで、本来であれば現在分と遡及分の診断書をそろえてから申請するのを、今回は主治医の退職が迫っていますから、すべての書類が完成するまで待つよりも、現在分の請求を止めないことを優先しました。
病歴就労状況等申立書を急いで作成し、すでに完成していた現在の診断書とともに、ご相談から1か月もかからず年金事務所へ提出しました。
実務上のポイント① 最初から全部そろうまで待つとは限らない
障害年金では、「現在分」と「障害認定日まで遡る分」を必ず同時に提出しなければならないわけではありません。
今回のように、
・主治医の退職が迫っている
・現在分の診断書はすでに完成している
・生活が苦しく、現在分だけでも早く請求したい
・遡及分については追加の診断書取得に時間がかかる
といった事情がある場合には、まず現在分を先に請求し、その後に遡及分を追加で請求する方法を検討することがあります。
重要なのは、「全部そろうまで何もしない」ことが、ご本人にとって本当に最善なのかを考えることです。
実務上のポイント② 申立書を作る過程で遡及可能性が見つかることがある
この方は中学2年頃から不登校となり、抑うつや希死念慮が現れていました。
19歳で精神科を初診し、心身症として治療を開始しましたが、大学は退学。
その後も短期間のアルバイトを試みましたが、記憶力低下や体調不良のため長続きせず、抑うつと気分高揚、過食・嘔吐、自傷、強い不安・焦燥、不眠などを繰り返していました。
現在はほぼ引きこもりで就労できず、希死念慮も持続しています。
入浴は週1~2回程度で、買物、食事の準備、薬の受取りなども母に頼り、外出はほぼ通院のみという状態でした。
この長い経過を時系列で整理したことで、現在だけでなく、初診日から1年6か月頃にもすでに重い障害状態があった可能性が見えてきました。
実務上のポイント③ 現在分の審査中に遡及用診断書を準備
現在分の請求を提出した後、審査を待っている間に、病院へ障害認定日当時の診断書作成を依頼しました。
そして約2か月後、まず現在分について障害基礎年金2級が認定されました。
その後すぐに、準備していた障害認定日当時の診断書を用いて遡及請求を追加しました。
このように、審査を待っている時間も使いながら次の手続きを準備することで、現在分の請求を遅らせることなく、遡及請求の可能性も残すことができました。
障害基礎年金2級が遡及して認定
結果として、障害認定日当時についても障害基礎年金2級が認められ、遡及認定となりました。
障害年金の申請では、単に「必要書類を全部そろえる」だけではなく、
・主治医がいつまで診断書を書けるのか
・現在分を早く提出する必要があるのか
・遡及請求の可能性があるのか
・どの書類を先に取り、どの書類を後から準備するのか
といった事情によって、申請の順番を組み立てることがあります。
今回も、主治医の退職期限とご本人の経済状況を踏まえ、「まず現在分を請求し、審査中に遡及分を準備する」という方法を取ったことが、早期の受給と遡及認定の両方につながりました。
この度は当事務所へご依頼いただき、ありがとうございました。

