統合失調症の障害年金申請|4年前の「発達障害疑い」の受診が初診日と認定された事例
この案件で難しかったのは、統合失調症を発症する4年前に、「発達障害かもしれない」と精神科を一度だけ受診していたことでした。
発達障害と、その後に発症した統合失調症を別の傷病と考えるのか、それとも一連の傷病として扱うのかによって初診日が変わり、障害基礎年金・障害厚生年金のどちらの対象となるかにも影響する重要な論点でした。
統合失調症の初診日は厚生年金加入中と考えていた
ご本人は、生きづらさの原因が発達障害ではないかと考え、精神科を一度受診していました。
しかし、その時点では「発達障害の疑い」であり、検査をしなければ判断できないと言われ、その後は通院を継続しませんでした。
それから約4年間、統合失調症にみられるような陽性症状・陰性症状は認められませんでした。
その後、厚生年金加入中に統合失調症を発症。以降は陽性症状と陰性症状を繰り返すようになりました。
そのため、ご家族は、「発達障害と統合失調症は別の病気なのだから、統合失調症で初めて受診した厚生年金加入中の日が初診日になるのではないか」と考えていらっしゃいました。
実務上のポイント① 発達障害と統合失調症は必ず別疾病とは限らない
発達障害と統合失調症が併存する場合の初診日は、単純ではありません。
厚生労働省の平成23年の疑義照会では、発達障害のある方に後から統合失調症が発症した場合について、原則として別疾病とする取扱いが示されています。
一方で、発達障害の症状の中に統合失調症様の病態がみられるケースなどでは、同一疾病として取り扱う場合もあるとされています。
つまり、
- どちらの傷病を先に発症したのか
- それぞれの症状がいつから現れていたのか
- 途中に症状のない期間があったのか
- 医師が両者の関係をどう診断しているのか
- 診断書や病歴全体ではどのような経過になっているのか
などを確認しながら判断する必要があります。
実務上のポイント② 「病名が違う=初診日も別」とは限らない
今回のケースでは、発達障害を疑って受診した時点から統合失調症を発症するまで約4年間あり、その間には統合失調症の陽性症状・陰性症状はみられていませんでした。
そのため、経過だけを見ると、後に発症した統合失調症について別の初診日が認められる可能性も検討しました。
しかし、実際の審査では、4年前に発達障害を疑って精神科を受診した日が初診日として認定されました。
精神疾患の障害年金では、後から診断名が変わったり、複数の診断名が付いたりすることがあります。
そのため、現在の診断名だけから初診日を決めるのではなく、最初の受診から現在までの症状・診断・治療経過を一連で確認しておくことが重要です。
そして、私は両者の初診日証明(=受診状況等証明書)を取得し病歴申立書も作成し、最初から審査へ提出しました。
その方が審査途中で返戻されず、結果が早まるからです。
実務上のポイント③ 初診日によって障害年金の種類が変わる
初診日は、単なる日付の問題ではありません。
初診日に国民年金へ加入していたのか、厚生年金へ加入していたのかによって、請求する障害年金の種類が変わります。
今回、ご家族が想定していた統合失調症の初診日は厚生年金加入中でしたが、審査では、それより4年前の発達障害に関する受診日が初診日として認定されました。
その結果、本件は障害基礎年金として審査され、2級に認定されました。
発達障害と統合失調症、うつ病など複数の精神疾患が関係するケースでは、「どの病名で現在請求するか」だけではなく、「最初の受診が現在の傷病とどのような関係にあるのか」まで確認することが非常に重要です。
障害基礎年金2級に認定
申請の結果、障害基礎年金2級に認定されました。
今回は、ご家族が想定していた初診日とは異なる結果となりましたが、最後までご理解・ご協力いただきながら手続きを進めることができました。
発達障害と統合失調症が併存するケースでは、病名だけを見て「別疾病だから初診日も別」と判断するのは危険です。
過去の受診歴、当時の症状、後発する精神疾患までの期間、診断書上の記載などを時系列で整理したうえで、初診日がどこになる可能性があるのかを検討する必要があります。
この度は当事務所へご依頼いただき、ありがとうございました。

