大腿骨頭壊死症の障害年金申請|30年前のステロイド治療との因果関係が初診日の争点となった事例
この案件で難しかったのは、診断書に記載された30年以上前のITP(特発性血小板減少性紫斑病)とステロイド治療が、現在の大腿骨頭壊死症の原因ではないかと審査途中で返戻されたことでした。
もし両者に因果関係があると判断されれば、初診日が小学生時代まで遡り、20歳前傷病の障害基礎年金には3級はございませんから、今回の障害厚生年金の請求結果そのものに影響する可能性がありました。
フルタイム勤務を続けながらの障害年金申請
このお客様はフルタイムで勤務しており、仕事と並行して障害年金の手続きを進めることに負担を感じていらっしゃいました。
必要書類の収集、病歴・就労状況等申立書の作成、年金事務所とのやり取りには相応の時間がかかるため、「専門家に任せた方が早く確実に進められる」と考え、当事務所へご相談いただきました。
左大腿骨頭壊死症を発症し人工股関節置換術へ
警備員として勤務中に左脚の違和感が現れ、その後、歩行時の痛みが徐々に悪化。左足を引きずるようになり、最終的には激痛で立ち上がることもできなくなりました。
医療機関を受診すると即日入院となり、左大腿骨頭壊死症と診断されました。
大学病院へ転院後、壊死範囲が広く、骨切り術では悪化する可能性があるとして人工股関節置換術を勧められました。
いったん痛みが軽減したため復職しましたが、再び症状が悪化して休職し、左人工股関節置換術を受けました。
実務上のポイント① 診断書の「既往症」から初診日が動く可能性
申請後、診断書の既往症欄に「ITP」の記載があったことから、審査機関より追加資料を求める返戻がありました。
ITPの治療ではステロイドが使用されることがあり、大腿骨頭壊死症の原因の一つとしてステロイド治療が関係する場合があります。
そのため、
- いつステロイド治療を受けたのか
- どの程度の期間使用したのか
- 投与量や治療頻度はどの程度だったのか
- 今回の大腿骨頭壊死症との因果関係が考えられるのか
について、詳しい説明を求められました。
ここが今回の障害年金申請で最大の論点となりました。
実務上のポイント② 30年以上前でカルテがなくても、そこで止めない
ITPを発症したのは小学6年生の頃でした。
しかし、当時の主治医はすでに退職し、診療記録も保存期間を過ぎて廃棄されていたため、30年以上前の治療内容をカルテから確認することはできませんでした。
それでも、ご本人に当時受診していた病院まで足を運んでいただき、残っている情報を可能な限り確認しました。
そのうえで、当時の発症状況や治療経過、ステロイド治療が一時的なものであったこと、その後30年以上にわたり大腿骨頭壊死症を発症していなかった経過などを整理し、今回の大腿骨頭壊死症との関係について説明しました。
実務上のポイント③ 「既往症がある=同じ傷病」とは限らない
障害年金では、過去に関連しそうな病気や治療歴があると、それだけで現在の傷病と同じ初診日にされるわけではありません。
大切なのは、過去の傷病と現在の請求傷病との間に医学的な因果関係があるのかを、治療経過や期間、残っている資料から具体的に整理することです。
今回も、「昔ステロイドを使っていた」という事実だけで結論を出さず、ITPの治療歴と現在の大腿骨頭壊死症との関係を時系列で整理して提出しました。
大腿骨頭壊死症の初診日が認められ、障害厚生年金3級に
最終的には、小学生時代のITP治療時ではなく、大腿骨頭壊死症として初めて医療機関を受診した日が初診日として認定されました。
その結果、人工股関節置換術後の状態について、障害厚生年金3級が障害認定日に遡って認められました。
古い病歴が関係する障害年金申請では、カルテが廃棄されていたり、当時の主治医がすでに退職していたりして、十分な資料を取得できないことも少なくありません。
そのような場合でも、既往症と現在の傷病との関係、治療時期、治療内容、その後の経過を一つずつ整理し、「なぜ今回の傷病の初診日をここに置くのか」を説明することが重要です。
今回も、ご本人に30年以上前の病院まで足を運んでいただくなど、多くのご協力をいただきながら、無事に障害厚生年金3級の認定につながりました。

