多系統萎縮症の障害年金|確定診断より前の受診日は初診日になる?
この案件で難しかったのは、多系統萎縮症と診断される何年も前から発汗異常、排尿障害、眩暈、ふらつきなどが続いていたにもかかわらず、複数の医療機関で「異常なし」と言われていたことでした。
難病の障害年金では、確定診断を受けた日だけを見るのではなく、現在の傷病につながる症状で最初に受診した時期まで遡って医療経過を整理する必要があります。
沖縄から「多系統萎縮症の申請経験がある社労士」を探してご相談
この方は沖縄県にお住まいでした。
周囲で多系統萎縮症の障害年金申請を扱った経験のある社労士が見つからなかったとのことで、インターネットを通じて当事務所へご相談いただきました。
精神・発達障害の障害年金を扱う社労士は比較的多い一方、難病では、症状の現れ方や診断までの経過が複雑になるので、手掛ける社労士が少ないです。
そのため、今回は遠方ではありましたが、オンライン面談、メール、郵送を活用して申請を進めました。
診断がつくまで長期間「原因不明」の症状が続いていた
約10年前から発汗異常が現れ、その約2年後には尿漏れや夜尿が始まり、常時尿取りパッドが必要になりました。
その後、転居を機に眩暈、立ちくらみ、強い倦怠感、ふらつきなども悪化しましたが、複数の医療機関を受診しても明確な原因は分かりませんでした。
転居先で就職したものの、転倒や体調悪化が増え、約1年半で退職。
その後は歩行、書字、発声、排尿、体温調節にも支障が広がり、大病院の専門医による診察と検査入院を経て、ようやく多系統萎縮症と確定診断されました。
実務上のポイント① 「確定診断日=初診日」とは限らない
多系統萎縮症のような難病では、病名が確定するまでに長い時間を要することがあります。
今回も、確定診断よりかなり前から、自律神経症状や歩行障害につながる症状が現れていました。
そのため、単に「多系統萎縮症と診断された日」を起点にするのではなく、
- いつ最初の症状が現れたのか
- その症状でいつ医療機関を受診したのか
- 各医療機関でどのような症状を訴えていたのか
- その後どのように症状が広がったのか
を時系列で整理しました。
診断名がついていなかった期間も含めて、現在の傷病とのつながりを確認することが重要な案件でした。
実務上のポイント② 「歩けない」だけでなく生活全体の制限を整理する
現在は平衡感覚が著しく低下し、屋内では伝い歩き、屋外では杖が必要な状態です。
しかし、多系統萎縮症では歩行障害だけでなく、
- 着替え
- 排泄
- 食事
- 入浴
- 体温調節
- 発声
- 書字
- 転倒の危険
など、生活のさまざまな場面に支障が及ぶことがあります。
今回も、単に「杖を使用している」と記載するのではなく、妻の介助が必要な場面や、一人で行動した場合の危険性まで具体的に整理して申請書類へ反映しました。
実務上のポイント③ 主治医への診断書依頼で何を伝えるか
難病の障害年金では、診断名や検査結果だけでは、日常生活上の支障が十分に伝わらないことがあります。
そのため今回は、これまでの病歴、現在の歩行状態、排泄や入浴などで必要な介助、転倒リスク、就労できない状態などを整理したうえで、主治医の先生へ診断書作成をお願いしました。
後日、主治医の先生から、こちらからお渡しした診断書依頼状について「これまで見たことがないほど専門的で分かりやすかった」旨のお言葉をいただきました。
障害年金では、診断書そのものを書き換えるのではなく、医師が診察室だけでは把握しにくい生活状況を、事実に基づいて適切に伝えることが重要です。
多系統萎縮症で障害厚生年金2級に認定
申請の結果、障害厚生年金2級に認定されました。
ご本人は家族を支える立場でありながら就労できず、医療費の負担も重く、障害年金の受給を強く希望されていました。
遠方からのご依頼でしたが、オンライン面談とメール・郵送で医療経過や生活状況を一つずつ整理し、無事に認定へつなげることができました。
多系統萎縮症のように、診断がつくまで長期間かかったケース、複数の医療機関を受診しているケース、自律神経症状・歩行障害・排泄障害など複数の症状が絡むケースでは、初診日から現在までの経過を一本の線として整理することが非常に重要です。

