純型肺動脈閉鎖症・フォンタン術後の障害年金|重い生活障害があっても「異常検査所見なし」で不支給となった事例

この案件で難しかったのは、在宅酸素療法を行い、軽い日常動作でも呼吸困難・動悸・チアノーゼが現れるほど生活上の制限が重い一方で、障害年金の認定基準上求められる「異常検査所見」に該当する項目が乏しかったことです。
フォンタン循環という特殊な血行動態を、一般的な心不全の検査数値だけでどこまで評価できるのか。
申請前から認定基準上の厳しさを予想していましたが、結果として、その点がまさに不支給の大きな壁となった事例でした。

認定基準上は厳しい。それでも申請をお受けした理由

最初にお問い合わせいただいた際、私は、現在の障害認定基準に照らすと、先天性心疾患としての認定は容易ではないことをご説明しました。
一方、ご本人から詳しく生活状況を伺うと、実際の症状や日常生活への影響は非常に重いものでした。
また、「主治医からは、フォンタン術後でこれほどの状態であれば障害年金の対象になるのではないかと言われている」とのお話もありました。
そこで、認定基準上のハードルがあることをご理解いただいたうえで、実際の病態と生活状況をできる限り診断書へ反映して申請することになりました。

幼少期から複数回の手術を受け、フォンタン循環へ

生後間もなく、先天性心疾患である純型肺動脈閉鎖症・機能的単心室と診断されました。
生後4か月で三尖弁切除、心房中隔欠損拡大術、右BTシャント変法術を受け、1歳9か月では左BTシャント変法術を実施。
その後シャント閉塞により緊急カテーテル治療も受けています。
2歳6か月には、右房と肺動脈をつなぐAPCフォンタン型手術を受けました。
その後もチアノーゼや強い疲労感が続き、運動、学校行事、進学、就労など、長年にわたり生活上の制限を受けてきました。
成人後は障害者雇用で勤務しましたが、体調悪化により退職。
フォンタン関連肝障害や不整脈も出現しました。
妊娠では死産・流産を経験し、3度目の妊娠では厳重な管理入院と酸素療法のもとで出産。
その後、心不全症状が悪化し、退院後も在宅酸素療法を継続していました。

実務上のポイント① 日常生活が重くても、それだけでは認定されない

本件では、軽い家事や移動でも呼吸困難、動悸、チアノーゼ等が出現し、一般状態区分も「エ」と評価されていました。
さらに、審査後に確認した障害認定調書では、病状を示す臨床所見は「7つ」と判断されていました。
つまり、症状や日常生活上の制限そのものについては、かなり重い状態であることが審査上も確認されていたことになります。
それでも認定には至りませんでした。
今回、大きな問題となったのが「異常検査所見」でした。

実務上のポイント② フォンタン循環では一般的な検査数値が壁になることがある

審査途中で返戻があり、直近の検査数値の提出を求められました。
提出した数値は、

  • EF 59.4%
  • BNP 51.9

でした。
本件では、フォンタン循環という特殊な病態であることから、これらの数値だけでは実際の循環状態や生活障害の重さが十分に伝わらないと考えました。
そこで主治医の先生にもご協力いただき、診断書の備考欄には、「なぜ一般的な検査数値だけを見ると重症に見えにくいのか」「それでも実際には低酸素状態や運動耐容能低下があり、日常生活が大きく制限されていること」を具体的に記載していただきました。
しかし、最終的な障害認定調書には、
「異常検査所見なし」
「臨床所見7つ」
「一般状態区分エ」
と記載され、不支給となりました。

実務上のポイント③ 「診断書に詳しく書けば認定される」とは限らない

今回の申請では、主治医の先生にも病態の特殊性を詳しく記載していただき、病歴・就労状況等申立書でも、幼少期から現在までの治療経過や日常生活上の制限を具体的に整理しました。
それでも認定には至りませんでした。
この経験から改めて感じたのは、障害年金では、実際の生活障害が重いことを詳しく説明するだけでは越えられない認定基準上の要件があるということです。
「症状がこれほど重いのだから認定されるだろう」と考えるのではなく、

  • 認定基準上、どの項目が必要なのか
  • 現在の検査結果がその項目に該当するのか
  • 診断書の臨床所見はいくつ該当するのか
  • 一般状態区分はどこに該当するのか
  • 実際の病態と認定基準との間にずれがないか

まで確認しておく必要があります。

「不支給だった」で終わらせられない事例

結果として、今回は残念ながら不支給となりました。
申請前から認定基準上の厳しさはご説明していましたが、実際に障害認定調書を確認し、「臨床所見7つ」「一般状態区分エ」でありながら、「異常検査所見なし」とされたことが認定の大きな壁になったことを目の当たりにしました。
フォンタン循環のように、一般的な心疾患とは異なる血行動態を持つ方について、現在の障害認定基準で実際の生活障害をどこまで評価できるのか。
今回の案件は、私自身も深く考えさせられるものとなりました。
障害年金の申請では、認定された事例だけでなく、「なぜ認定されなかったのか」を障害認定調書まで確認し、次の申請や同じ病気の方への支援に生かしていくことも重要だと考えています。

 

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