20歳前に精神科受診歴があっても障害厚生年金3級|約10年の社会的治癒が認められたうつ病の事例
この案件で難しかったのは、本当の初診が17歳の摂食障害であり、そのままでは20歳前傷病として障害基礎年金の対象となり、3級が存在しないことでした。
ところが病歴を詳しく確認すると、その後、厚生年金加入中に再び精神症状が悪化するまで、約10年間にわたり通院も服薬もせず、一般就労を続けていた期間がありました。
そこで、この期間を「社会的治癒」として整理し、厚生年金加入中の再発時を新たな初診日として申請しました。
フルタイム就労を続けることに限界を感じていた
ご相談のきっかけは、支援していたNPO法人からのご紹介でした。
ご本人はこれまで障害を開示せず一般就労を続けていましたが、フルタイム勤務を維持することに限界を感じていました。
それ以前にも離職・転職を繰り返しており、障害年金を受給しながら勤務時間を抑えて働く方が、生活も就労も安定するのではないかとのことでご相談いただきました。
実際にお会いすると、会話や外出は可能であり、日常生活にも一定の自立性がありました。
一方、就労すると、苦手意識のある上司には分からないことを質問できず、仕事が進まなくなって自己評価を下げ、体調を崩して退職する・・・ということを繰り返していました。
現在の状態は、2級というより障害厚生年金3級相当と考えました。
実務上のポイント① 17歳の初診では「3級」がない
病歴を確認すると、本当の初診は17歳の頃の摂食障害でした。
この初診日をそのまま採用すると、20歳前傷病として障害基礎年金の対象となります。
しかし、障害基礎年金には1級と2級しかなく、3級はありません。
今回のご本人は、就労も日常生活も一定程度可能であり、現在の障害状態からみて2級相当とは考えにくい状態でした。
そこで、「17歳の初診から現在までが本当に一続きの療養経過なのか」を改めて詳しく確認しました。
実務上のポイント② 約10年間の無受診・無服薬・就労に着目
病歴・就労状況等申立書を作成するため、17歳から現在までの経過を細かく聞き取っていくと、重要な期間が見つかりました。
厚生年金加入中に症状が再発するまで、約10年間、
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精神科等への通院なし
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精神科薬の服薬なし
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一般就労を継続
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通常の社会生活を送っていた
という期間があったのです。
そこで、この期間について社会的治癒が成立している可能性があると考えました。
精神疾患の障害年金では、過去に受診歴があるからといって、必ずその最初の受診日が永久に初診日になるとは限りません。
長期間にわたり治療の必要がなく、社会生活を通常に送れていた期間がある場合には、その後の再発について新たな初診日を検討できることがあります。
実務上のポイント③ 古い初診を隠さず、両方の初診日資料をそろえる
今回は、17歳の受診歴をなかったことにして申請したわけではありません。
むしろ、
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17歳当時の初診日証明
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厚生年金加入中の再発時の初診日証明
を両方取得しました。
病歴・就労状況等申立書も17歳当時から現在までの経過を省略せず作成し、そのうえで、約10年間の無受診・無服薬・就労期間について別途申立てを行いました。
社会的治癒を主張する場合には、単に「昔は元気でした」と書くのではなく、いつからいつまで治療を受けていなかったのか、その間どのような生活・就労をしていたのかを具体的に示すことが重要です。
社会的治癒が認められ、障害厚生年金3級に認定
申請の結果、厚生年金加入中の再発時が初診日として認められ、障害厚生年金3級に認定されました。
精神疾患では、10年、20年前の受診歴が突然、障害年金の初診日問題として浮上することがあります。
そのような場合も、古い受診歴だけを見て結論を出すのではなく、その後に治療を必要としなかった期間がどの程度あるのか、無服薬で生活できていたのか、通常の就労をどの程度続けられていたのかまで確認することで、社会的治癒を検討できる場合があります。
ご本人からは、障害年金が決まったことで安心感が生まれ、これまでより無理をせず、目の前の仕事に向き合えそうだとのお言葉をいただきました。
障害年金を受給しながら、ご本人に合った働き方を続けていただければと思います。
この度はご依頼いただき、ありがとうございました。

