障害年金『受給決定率90%以上』のカラクリ――その数字だけで社労士を選んでいませんか?

「受給決定率95%」と書いてあったら、安心しますか?

障害年金を依頼する社労士をインターネットで探していると、
「障害年金の受給決定率95%以上」
「受給成功率90%以上」
といった言葉を目にすることがあります。
障害年金を受給できるかどうか不安な方にとって、このような数字はとても心強く見えると思います。
「これだけ高い成功率なら、この社労士に任せれば大丈夫そう」
そう思うのも自然なことです。
しかし、私が障害年金を専門に取り扱う社会保険労務士としてお伝えしたいのは、「受給決定率が何%か」という数字だけで、依頼する社労士を決めないでほしいということです。
なぜなら、その数字がどのように計算されたものなのかによって、意味が大きく変わるからです。

大切なのは「90%」ではなく、その“分母”です

たとえば、ある社労士事務所に100人から障害年金の相談があったとします。
その中から、受給できる可能性がかなり高いと判断した10人だけを受任し、そのうち9人が受給決定となれば、「受給決定率90%」になります。
この数字自体は間違いではありません。
しかし、
・初診日の証明が難しい方
・障害等級に該当するか判断が分かれる方
・複数の傷病をお持ちの方
・過去に一度不支給になっている方
など、難しい案件については最初から受任していなかったとしたら同じ「90%」でも、決定率はずいぶん変わるのではないでしょうか。
だから私は、「受給決定率は何%ですか?」よりも、「どのような案件を受任しているのですか?」の方が、その事務所を知るためには大切な質問だと思っています。

公的な認定率と、社労士事務所の「成功率」は単純比較できません

日本年金機構が公表している「障害年金業務統計(令和6年度決定分)」では、新規裁定146,225件のうち、非該当は18,982件、13.0%でした。
一方で、1級・2級・3級・障害手当金として決定されたものは合計で約87%になります。
ただし、この数字はあくまで障害年金全体の決定状況です。
社労士が関与した案件だけを集計したものでもなければ、案件の難易度別に集計したものでもありません。
したがって、「国全体で何%だから、この事務所の90%は高い」
あるいは、「90%だから、この事務所は他の事務所より優秀だ」と単純に比較できるものではありません。
数字を見るのであれば、その数字が「何を分母として、何を成功としているのか」を確認する必要があります。

※出典:日本年金機構「障害年金業務統計(令和6年度決定分)」

私が社労士選びで見ていただきたいと思うこと

障害年金は、同じ病名であっても、必ず同じ結果になる制度ではありません。
初診日、保険料納付要件、診断書の内容、日常生活状況、就労状況、病歴就労状況等申立書の内容など、さまざまな事情を総合して審査されます。
そのため、本当に確認してほしいのは「成功率」だけではありません。
たとえば、「なぜ自分の場合は受給できる可能性があるのか」反対に、「どこが不支給になる可能性のあるポイントなのか」を、相談の段階できちんと説明してくれるか。
私は、こちらの方がはるかに重要だと思っています。
障害年金の申請に「絶対」はありません。
だからこそ、良いことだけを伝えるのではなく、「この部分はプラスに考えられます」「ただし、この部分については審査で厳しく見られる可能性があります」と、プラス材料とマイナス材料の両方を説明してくれる専門家であることが大切です。

「難しい案件にどう向き合っているか」も聞いてみてください

もう一つ、社労士を選ぶ際に聞いてみていただきたいことがあります。
それは、「不支給になった場合の不服申立にも対応していますか?」という質問です。
障害年金では、最初の申請で不支給となった場合、審査請求、さらに再審査請求という不服申立の制度があります。
不服申立では、単にもう一度申請書類を提出すればよいわけではありません。
なぜ不支給になったのかを分析し、認定基準や診断書、医療記録などを精査したうえで、「なぜ原処分が妥当ではないのか」を組み立てていく必要があります。
初回請求とは比較にならないレベルの専門性と、膨大な書類作成、多くの時間を要する業務です。
もちろん、不服申立の件数が多ければ優秀な社労士、少なければ良くない社労士、という単純な話ではありません。
ただ、「難しい案件や、不支給になった案件に対して、その事務所がどこまで向き合っているのか」を知る一つの材料にはなると思います。
「これまで不服申立を扱ったことはありますか?」「不支給になった場合も相談できますか?」と聞いてみるのもよいでしょう。

「成功率」より、あなたの案件をどう見ているか

障害年金を依頼する方にとって、本当に重要なのは、その事務所全体の成功率が90%なのか95%なのかではありません。
大切なのは、「あなた自身の障害年金について、どのように考えてくれているのか」です。
受給できる可能性が高いのであれば、その理由を説明してもらう。
難しいのであれば、何が難しいのかを説明してもらう。
そして、難しい案件であっても検討する余地があるのであれば、「どうすれば可能性を探れるのか」を一緒に考えてもらう。←※「本当は3級相当なのを社労士に頼めば2級相当へ引き上げることができる可能性を探れる」という意ではございません。
そういった姿勢こそ、障害年金を依頼する社労士を選ぶ際の大切な判断材料ではないかと、私は考えています。

最後に

「受給決定率90%以上」

この数字自体が悪いわけではありません。
実際に高い受給決定率を維持しながら、丁寧に障害年金業務に取り組んでいる事務所も当然あると思います。
ただし、数字だけでは、その事務所がどのような案件を受け、どのような案件を断り、難しい案件にどこまで取り組んでいるのかまでは分かりません。
もし、これから障害年金を依頼する社労士を探されるのであれば、「成功率は何%ですか?」だけではなく、
「私の場合、どこが認定されるポイントになりますか?」
「逆に、不支給になるとしたら、どこが問題になりそうですか?」
「難しい案件や不服申立にも対応していますか?」
と聞いてみてください。

その質問にどう答えるか。
そこに、その社労士の障害年金に対する考え方や、依頼者への向き合い方が表れるのではないでしょうか。

 

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